家づくりにはたくさんの準備が必要です。その中でも、自分たちの家づくりに対する想いを建築士に正確に伝えることはとても大切です。
なぜなら、建築士がどれだけ正確に住まい手の希望を聞けるかで設計の完成度が変わってくるからです。意思疎通にはお互いの協力がなければ成立しません。
そこで今回は建築士が住まい手に聞きたい重要なことを解説します。これらをあらかじめ考えておくことでスムーズに打ち合わせを進めることができます。
重要な項目は以下7つです。
- 建物のイメージは?
- 休日の過ごし方は?
- 収納量はどれくらい?
- 生活時間帯は?
- 仕事のこと
以下にて解説します。
建物のイメージは?
建物のイメージを伝えることは最も大切です。SNSや雑誌などでお気に入りの写真を集め、自分自身の好みを理解しましょう。
色々検討すると素敵な外観やインテリアがたくさんあるため、希望をしぼるのは難しく時間がかかります。
実際の家やモデルハウスを見学するのもおすすめです。具体的には必要なイメージは以下の5つです。
- 間取りのイメージ
- 外観のイメージ
- インテリアのイメージ
- キッチンのイメージ
- 家具のイメージす
- 照明のイメージ
間取りのイメージ
好きな間取りを検討しましょう。
平屋が2階か、吹き抜けがほしいか、LDKはどのような形が良いかなど。間取りは家づくりの根本となる要素なので最も重要です。その他、基本的な部屋数に加えて
- 土間収納
- ウォークインクローゼット
- パントリー
- スタディスペース
- タタミ
- 書斎
- 室内物干し
などが要るかどうかもよく考えましょう。
調べればたくさんの事例を写真で見ることができますが、できれば実際にたった家やモデルハウスで見学できたらイメージの差も少なくなります。
外観のイメージ
外観は間取りや屋根形状によって大きく変わります。
逆に言うと、この外観ならこの間取りじゃないとできない、といった縛りもあります。計画に大きな影響を与えるのでこだわりがあるなら早めに決めておきましょう。
また、外観は金額にもとても大きな影響を与えます。たとえばモダンなイメージの陸屋根は普通に屋根をかける家と比較して防水工事が何百万円という単位で上がります。
外観が決まらないと間取りや資金計画が決まらないため、早めの検討が必要です。
インテリアのイメージ
インテリアは後からどうにでもなると思われがちですが、それは間違いです。
なぜならキッチン、照明、カーテンの商品やイメージによっては、窓の形状や部屋の形が変わるからです。
たとえばキッチンの形によってはダイニングキッチンの広さや形状が変わります。照明器具によって天井の形状が変わります。カーテンの種類によってサッシの計画が変わります。
このように、インテリアと間取りは密接な関係があります。
インテリアはイメージを固めるまで時間もかかるので、なるべく早めに検討しておきましょう。
キッチンのイメージ
キッチンにはたくさんの形状があります。
壁付、対面、アイランド、ペニンシュラ、セパレート、などです。どのキッチンのスタイルにするかによってLDKの形や広さを調整する必要があります。
キッチンの大きさや形状によって収納量も変わります。それによってはキッチンと食器棚に加えてパントリーなどのキッチン収納を検討する必要性も出てきます。
キッチンは間取りに大きな影響を与えます。早めに抑えておきましょう。
家具のイメージ
インテリアの中でも家具のイメージはとても重要です。
なぜなら家具はデザインだけでなく、サイズを考えておく必要があるからです。テーブル、ソファ、ベッドなど、大きな家具ほど早めの検討が必要になります。
部屋の広さは家具の配置で決まると言っても過言ではありません。
家具がうまく配置できている空間は面積が広くなくてもすっきり見えますし、家具の配置が悪ければ広くてもどこかごちゃごちゃして見えます。
家具のイメージなしでは設計ができないと言ってもいいくらいです。
照明のイメージ
照明にはたくさんの器具があり、それらに合わせた計画が必要です。
特に注意が必要なのは間接照明です。大工工事でつくる壁などの造作で照明を隠すため、早い段階で設計図面に盛り込む必要があります。
また、壁付けのブラケットなども注意が必要です。ブラケットは壁を照らすので、きれいな壁面を残す必要があります。換気口やコンセントを設けないように注意しましょう。
休日の過ごし方は?
建築士は住まい手が休日どのように過ごすのかを聞きたいです。
休日の過ごし方にはその人の趣味趣向が色濃く現れるからです。
お庭でバーベキューをしたり書斎で集中して本を読んだり、好きなことを思いっきりできるような工夫をしましょう。
たとえば以下のような趣味ならどのような工夫ができるでしょうか。
- アウトドアが好き
- 車が好き
- 読者が好き
- ネットゲームが好き
- 映画が好き
アウトドアが好き
アウトドア好きなら庭と土間収納が大事です。
庭に十分なスペースがあるとバーベキューやテント張りができます。室内と外をつなぐウッドデッキなどがあったらなお使いやすくなります。
また、アウトドアはたくさんの道具を収納するスペースが必要です。玄関の土間収納スペースを十分に設け、できれば外部倉庫も活用しましょう。
外部倉庫は駐車場の近くに設けると車に積荷をするときも楽にできます。
車が好き
車が好きな人はガレージまわりの詳細設計が必要です。
洗車や車の整備がしやすいように設備や収納を考えます。当然車種に合わせた駐車寸法、カーポートなども必要です。
玄関や部屋の中から車が見えるように設計しても良いでしょう。その際はなるべく車のサイドボディが見えるような向きを考えます。
駐車場を好きなように設けることができるのも戸建住宅の大きなメリットです。
読者が好き
読書好きは本の収納スペースと読書スペースを設けます。
好きな本を並べて眺めたいという方もいるので、本棚は見せ方も重要です。本棚の近くに落ち着いて読書ができるスペースがあると図書館気分が味わえます。
直接日が当たるスペースは本が日焼けするのでお勧めしません。北側の窓からやわらかい採光が取れたらベストです。
ネットゲームが好き
ゲーム好きならゲームのための部屋が欲しいでしょう。
ゲーミングPC、ゲーミングチェアをはじめ、快適にゲームをするにはある程度の環境づくりが重要です。
場合によっては他の部屋に音が響かないように間取りの配慮や防音対策をする必要があります。
映画が好き
シアタールームに憧れを持つ方は多いのではないでしょうか。
プロジェクターとスクリーンを使用すれば本格的なシアターを楽しむことができます。そのときは音響にもこだわりたいので、綿密な電気設備計画が必要です。
また、簡易なシアタールームを作ることも可能です。
- プロジェクター専用クロス
- プロジェクター付き照明
を使用して、部屋の天井中央に付けている照明から壁に映写するという方法もあります。
しばらく使わない子ども部屋や寝室をシアタールーム代わりにしても良いと思います。
収納量はどれくらい?
収納が少ないと部屋が片付きません。家づくりを経験された方でも、収納が足りなかったという失敗談はとても多く聞きます。
しかし、わかっていても収納の計画は失敗してしまうことがよくあります。それは必要な収納量が人によって異なるからです。
自分が必要な収納量をある程度正確に把握できていなければ、収納が少なすぎて全く片付けが捗らない、または収納を設けすぎて半分しか使っていないということが起こります。
とくに物があふれがちな以下4点についてはよく考えておきましょう。
- クローゼット
- キッチン
- 本
- 納戸
クローゼット
洋服の収納量を確かめましょう。
クローゼットの収納量が足りなかったら毎日の洋服選びが憂鬱になり、衣替えも大変になり、買い物も楽しめなくなります。
必要な収納量を確かめるには今使っているハンガーパイプの長さを測るのが一番です。また、クローゼットを設けるのは寝室なのか、リビングなのか、玄関なのかも考えましょう。
毎日使うクローゼットがストレスの原因にならないように洋服掛けの量をしっかりと確かめましょう。
キッチン
キッチンの収納はとても重要です。
キッチンは調理器具、食器、家電、食材などたくさんの物があふれやすいからです。収納が十分でなければ料理や後片付けなどの家事が段取りよくできません。
キッチンの収納量を確かめるため、クローゼット同様に今使っているキッチンと食器棚のサイズを確かめましょう。家電を置くカウンターの長さや冷蔵庫スペースもお忘れなく。
本
本棚はあらかじめ計画しておきましょう。
なぜなら結局後から本棚を置くことになるからです。たとえ本をほとんど読まない人でも、書類、取説、絵本など、一定量の本棚は必要になるはずです。
置き家具があると部屋はすっきり見えません。また。掃除機をかけるのも大変です。
少しでもよいので本棚を確保しましょう。もちろん書物が多い方は大きな本棚が家のどこかに必要です。
納戸
納戸は季節ものの収納に大活躍です。
季節ものとは普段使わないけど一年のうち少しだけ使う物のことです。具体的には以下の通り。
- 布団
- かぶと人形
- ひな人形
- ヒーター
- こたつ
- 扇風機
- クリスマスツリー
- 旅行バック
これらを収納する部屋がないと不便だと思いませんか?
納戸が難しければ押入でも十分です。部屋として設けるよりも少ない面積で収納量を確保できます。
また、押入を取るのも難しいときは枕棚を活用しましょう。クローゼットの上、物入れの上は意外と空いているものです。
生活時間帯は?
住宅の設計は生活時間帯を考える必要があります。
それは「音」の問題があるからです。生活音が就寝の邪魔をしないようにしなければいけません。
具体的には以下のようなことを考える必要があります。
- 洗濯・物干し
- 食器洗い
- トイレ
洗濯・物干し
洗濯と物干しの時間帯と場所を考えましょう。
寝ているときにとなりの部屋で洗濯機や乾燥機が動いていたら気になってしまうからです。よく眠れないのも困りますし、効率の良い時間に洗濯や物干しができないのも困ります。
普段は午前中に洗濯や物干しをするご家庭でも、季節によっては夜洗濯をすることはあると思います。
脱衣室やランドリールームが寝室の横にないか注意しましょう。
食器洗い
食器洗い乾燥機は夜運転するケースがほとんどです。
なぜなら夕ご飯の後大量の洗い物をタイマー予約で洗うケースがほとんどだからです。
夕ご飯が終わってすぐに運転するとテレビの音が聞こえ辛いため、ほとんどタイマー予約で使用します。
食器洗い乾燥機は洗い物の手間を大幅に削減してくれます。思う存分この時短家電を使用できるよう、深夜に音が出ることを十分に理解しておきましょう。
トイレ
最も音対策が必要なのはトイレで少しでも。
流す音、手を洗う音、ペーパーホルダーのカラカラ音など、トイレでは色々な音が発生するからです。
トイレを設ける位置のほか、様々な配慮で対策が可能です。
トイレ前の廊下を建具で仕切る
間仕切り壁に吸音材を入れる
排水管に吸音材を巻く
トイレのドアをパッキン付きにする
家族であっても、トイレくらいはお互いに気を遣わずに使用したいですよね。
仕事のこと
どういった仕事をしているのかによって家の設計は変わります。
仕事はライフスタイルそのものとも言えるからです。住まい手の職種や仕事内容を理解することで最適な提案ができます。
仕事によって設計が変わる具体的な理由は以下の通りです。
- 通勤手段
- 生活時間帯
- 家で仕事はする?
通勤手段
通勤手段によって設計が変わります。
駐車場の利便性や朝の身支度のことを考慮する必要があるからです。
車での通勤なら駐車は毎日のこと。スペースや停め方など、利便性を重視する必要があります。
また、バスや電車通勤なら朝出る時間はほぼ同じ時間になります。家族の身支度の時間と重なるなら洗面やトイレの使い勝手をより考慮する必要があります。
自転車通勤なら屋根付きの駐輪場が必要です。
通勤手段によってはストレスが生じるかもしれないポイントが変わってきます。
家で仕事はする?
家で仕事をするかどうかで設計は変わります。
作業スペース、収納スペース、場合によっては部屋が別途必要になるケースもあるからです。
集中して作業をすることはもちろん、音声通話などを考えると個室のほうがよいでしょう。また、個人情報や貴重な書類を扱うならリビングで作業するのは少し不安です。
感染症の影響で自宅隔離期間などを考慮すると、今はしていなくてもこれから必要になる人も多いのではないでしょうか。家で仕事をする環境が必要かどうかを考えておきましょう。
まとめ
家づくりをするときは以下について要望をまとめておきましょう。
- 間取り、外観、インテリアなどの建物のイメージ
- 趣味などの休日の過ごし方
- 洋服、キッチン、本などの必要な収納量。
- 家族全員の生活時間帯
- 仕事のこと
要望を的確にまとめるとスムーズに建築士に相談ができます。理想の家をつくるために、自身の生活について分析してみましょう。