間取りを考えるときに動線はとても大事です。
なぜなら動線をうまく整えることで以下のようなメリットがあるからです。
- 家事のストレスが軽減される
- 作業性が向上し、家事が楽にできるようになる
- 物が片付けやすくなり家をきれいに使える
- うがい手洗いや洋服をハンガーにかけるなどの子どもにしてほしいことが習慣化しやすくなる
動線は間取りを考えるときに欠かせない要素といえます。そして具体的に考えなければいけない動線には以下のような種類があります。
- 帰宅動線
- 家事動線
- 洗濯動線
- クローゼットの動線
- 来客の動線
- トイレへの動線
それぞれどのようなことに注意しなければいけないか、どのような効果がのぞめるかについて建築家と一緒に考えていきましょう。
帰宅動線
建築家が考える帰宅動線で重要なことは以下の通りです。
- 靴の収納
- 洋服・バッグの収納
- 手洗いうがい
- スマホ・鍵の置き場
靴の収納
帰宅して靴を脱いで収納するまでの動線を考えましょう。
玄関収納の計画が悪いと靴を収納しづらく、玄関が散らかってしまうからです。
靴を収納する棚や下駄箱は、玄関土間とホールにまたがるような位置に計画するのが理想的です。
また、ウォークスルーの土間クロークを設けると靴を出しっぱなしにしていても目立たないというメリットもあります。
自然な帰宅動線の途中に玄関収納を設け、靴をすっきり収納しましょう。
洋服・バッグの収納
靴を収納したら洋服とバッグの収納を考えます。
上着やバッグをついリビングに置いたままにしてしまうことはありませんか?玄関から自然な動線でクローゼットやバッグを置く棚があれば、リビングが散らからなくて済むかもしれません。
そのために、玄関のすぐ近くにクローゼットを設けましょう。上着を数着掛けることができるハンガーパイプと、バッグが置けるような50〜100センチの高さの棚があると便利です。
洋服とバッグが置けるようなクローゼットがあるとお出かけ前の身支度がとてもやりやすくなります。
手洗いうがい
外から帰ったら手洗いうがいがすぐにできるような動線を考えましょう。
帰宅してすぐに手洗いうがいができたら衛生面でメリットがあるだけでなく、幼い子どもに手洗いとうがいの習慣化においても有効だからです。
いくら言葉で言い聞かせても、子どもはなかなか言うことを聞かないものです。うがい手洗いが自然と習慣になるような環境を用意してあげることが重要です。
スマホ・鍵の置き場
スマホや鍵の置き場があると便利です。
身につけているものやポケットの中にあるものを出す場所を決めておくと、あちこちに置くことがなくなります。そうするとテーブルやソファのまわりに物が散らかりにくくなります。
また、スマホを充電する場所と充電するタイミングが定まるのも良い点です。帰宅したらすぐに充電することが習慣になると、充電忘れの心配が少なくなります。
帰宅して置きやすい位置、出掛ける前に取りやすい位置に鍵やスマホを置けるようなスペースを設けましょう。
家事動線
建築家が提案する、家事動線で重要なことは以下の通りです。
- 使いやすいキッチンまわり
- 水まわりはなるべく1箇所に
- 収納の位置
使いやすいキッチンまわり
キッチンまわりは使いやすい動線を考えましょう。
家事の中でも、キッチンでの作業はとても多いからです。料理、洗い物、片づけ、掃除。動線が良くて使いやすいキッチンを作ることは使いやすい家事動線を作ることそのものです。
具体的におすすめするのは回遊導線と直線動線です。
キッチンの両側をぐるぐると回遊できる動線を確保すると、行き止まりがなく動きやすくなります。冷蔵庫に飲み物を取りに行く、コップや箸を出すなどもしやすいでしょう。
また、キッチンとテーブルが直線に並んでいる間取りは配膳や後片付けがとても楽です。パントリーや冷蔵庫の位置を考える際も、まっすぐの動線上に設けることで利便性が良くなります。
たとえ使いやすい収納があっても、動線が悪ければ使いやすいキッチンにはなりません。キッチンは使いやすい動線を意識して計画しましょう。
水まわりはなるべく1箇所に
水まわりはなるべく1箇所にまとめると家事が楽になります。
水まわりを1箇所にまとめることで、消耗品をまとめて収納できる、掃除を同時にしやすいなどのメリットがあるからです。
収納、掃除の動線を短くすることで家事の負担を大幅に減らすことができます。
水まわりを1箇所にまとめて動線の短縮を図りましょう。
収納の位置
生活動線を考えて収納の位置を決めましょう。
なぜなら使いたいときに使いやすい位置に収納がないと不便だからです。そのため収納を計画するときは何をしまうか、どこに設けるかを考える必要があります。
たとえばリビングで日常的に使用する可能性があるものを考えましょう。文房具、薬、書類、パソコン、など。
リビングで使うものなので、当然ながらリビングに収納されている方が取りやすく、使いやすいはずです。
収納のしやすさ、使いやすさを考慮して収納の位置を考えましょう。
洗濯動線
建築家が提案する洗濯動線のおすすめは以下の通りです。
- 洗って干すまでの動線を短く
- 取り込んでたたむまでの動線を短く
- 収納するまでの動線を短く
洗って干すまでの動線を短く
洗濯物を洗って干すまでの動線を短くしましょう。
洗った後の洗濯物は重たく、二階に持って上がったり外に運んだりするのはなかなか大変です。短い動線で干せたら洗濯の負担はかなり減ります。
たとえば脱衣所のすぐ横にランドリールームを設けたらどうでしょうか。大きな脱衣カゴを抱えた状態でも楽に移動ができます。
また、脱衣所を広めに設けて室内物干しと兼ねてしまうのもおすすめです。
洗って干すまでの動線を短くすると洗濯物が多い日でもスムーズに物干しができます。
取り込んでたたむまでの動線を短く
洗濯物を取り込んでたたむまでの動線を短くしましょう。
たたむ前の乾いた洗濯物はかさばります。取り込んですぐにたたむというスムーズな動線が確保できていなければ、たたまずに放置してしまう可能性が高くなります。
物干しスペースの近くに畳コーナーや家事コーナーを設けることなどが対策として有効です。また、ランドリールームの中に広めのカウンターを設けても良いと思います。カウンターはアイロン掛けなどにも利用可能なのでとても便利です。
どこで干すのも重要ですが、どこでたたむかも考えて洗濯動線を計画しましょう。
収納するまでの動線を短く
最後に収納するまでの動線を考えましょう。
収納の動線が短いと洗濯物をすぐに収納することができます。収納する場所がバラバラで動線が長いと、たたみ終えたまま放置してしまう時間も長くなってしまいます。
たとえば家族全員分の衣類が置けるようなファミリークローゼットを設けると一気に収納ができます。また、衣替えやサイズのチェックなどの管理も家族全員分が一箇所にまとまっていた方がやりやすくなります。
このファミリークローゼットが洗濯物を干す場所、たたむ場所のすぐ近くにあると理想的です。
収納することまで考えて、使いやすい洗濯動線を確保しましょう。
クローゼットの動線
建築家がおすすめするクローゼットの動線の提案は以下の通りです。
- クローゼットはリビングの近くにあった方がよい
- 玄関横のクローゼットは身支度が楽
クローゼットはリビングの近くにあった方がよい
クローゼットを設ける位置は様々ですが、リビングの近くにあると使いやすくなります。
その理由はクローゼットを利用するタイミングにあります。
クローゼットを利用するのは、
- 朝着替えるとき
- たたんだ洋服を収納するとき
- 外から帰ってきたとき
- お風呂に入る前に着替えを取りにいくとき
といったタイミングです。どのシチュエーションもリビングの近くにあった方がスムーズな動線が確保できそうです。
寝室まわりの方がたくさんの収納量を確保できるというメリットはあります。リビングの近くで大きなクローゼットを取るとリビングが狭くなるためです。
しかし、いざ使うタイミングで都度寝室まで行くのは少し不便です。毎日の生活を考えると、普段使いの洋服だけでも収納できるようなクローゼットをリビング近くに設けて動線を改善しましょう。
玄関横のクローゼットは身支度が楽
さらに、玄関の近くにクローゼットを設けると身支度が楽です。
外出前は、上着、ハンカチ、バッグ、鍵などの準備が必要になりますが、玄関の横にクローゼットがあれば自然な動線で身支度ができます。
小学生は学校で必要なものや名札をまとめて置いておくこともできます。
また、帰宅時も便利です。帰ってすぐにクローゼットで上着を脱ぎ、バッグを置くことができます。服やバッグはついついリビングに置きがちですが、玄関の横にクローゼットがあるとリビングが散らかりません。
来客の動線
建築家がおすすめする来客の動線の提案は以下の通りです。
- 客間への動線を意識する
- ダイニングへの動線を意識する
- 子ども部屋への動線を意識する
客間への動線を意識する
和室を客間として設ける場合は、玄関からすぐに行けるような動線を確保しましょう。
客間はプライバシーを確保する必要があります。キッチン、洗面室、収納など、プライベートスペースを通らず、玄関や玄関ホールから直接アクセスできるのが理想的です。
見せたくないものを見せない計画にしましょう。
また、客間はゲストが泊まったり、将来的に寝室として使用したりすることもあると思います。そのため、寝室や子ども部屋からなるべく離すこと、または上階に持ってこないことが大切です。
客間への動線はなるべく生活動線から分離して計画しましょう。
ダイニングへの動線を意識する
来客を考えたときに意識しなければいけないのはダイニングへの動線です。
なぜなら来客があったとき、お茶を出したり話をしたりするのはほとんどダイニングだからです。最近は客間がない間取りも多いことからも応接はダイニングが最適ですし、椅子は服装や体調を問わずだれでも座りやすいのもメリットです。
そういった意味で、キッチンと食卓が直線になっているストレートダイニングはプライバシーを確保しにくいといえます。
食卓に座っていてキッチンの足元が見えることもあるので計画する際は注意しましょう。
人が来たらダイニングにお通しすることが多いことを意識して間取りの計画を進めることが重要です。
子ども部屋への動線を意識する
玄関から子ども部屋までの動線を意識しましょう。
来客が少ないご家庭でも、子ども部屋の来客が多いところは少なくないからです。平日は毎日お友達が遊びに来るという状況だって考えられます。
玄関からなるべくプライベートスペースを通らずに子ども部屋まで行けるように計画をしましょう。
トイレへの動線
建築家がおすすめするトイレへの動線の提案は以下の通りです。
- 廊下のトイレは寒い
- リビング続きのトイレは音に注意
- 寝室からは程よい距離が必要
廊下のトイレは寒い
廊下のトイレは寒いです。
なぜなら居室と違い廊下や玄関ホールは暖房をいれないからです。高断熱の家にしたとても、冬場は廊下や玄関ホールとリビングにはかなりの温度差があると思います。
居室からのプライバシーを考慮して廊下からいけるようなトイレにすることは珍しくないですが、温度環境の差には注意しましょう。
リビング続きのトイレは音に注意
リビング続きのトイレは温度環境が良いことが長所ですが、音が気になることが短所です。
建具を閉めたとしても、ある程度の音は響いてしまうからです。トイレの度に音を気にしてしまっては毎日の生活にストレスが増えてしまいます。
対策として建具を静音仕様にしたり、音声付きのリモコンにしたりすることは有効です。建具を追加するという手もありますが、トイレに行くたびに二枚の建具を開け閉めするのも手間なのであまりおすすめしません。
リビング近くにトイレを設ける際は音に注意して計画しましょう。
寝室からは程よい距離が必要
寝室の近くにトイレがあると便利ですが、近すぎると音が気になります。
トイレットペーパーのカラカラ音や流す音なども、寝静まっているときは結構気になります。動線も重要ですが、音にも考慮して程よい距離を確保しましょう。
まとめ
建築家がおすすめする動線の提案をお話ししました。
動線は生活そのものです。動線を考えることで、見えない日々のストレスを小さくしたり、家事をスムーズに行うことができたり、やらなければいけないことを習慣化しやすくなったりします。
具体的には動線を直線にする、短くする、分離するなどの工夫を行うため、場合によってはコストをかけずに改善をすることも可能です。
動線を意識した家を計画して、ストレスが少ない便利な家で楽しく生活をしましょう。