木は空間に落ち着きややすらぎを与えてくれます。木質感あふれる空間はあたたかみがあり、とてもくつろげる空間になります。
木にはリラックス効果があることは科学的にも証明されています。視覚、嗅覚だけでなく、音を和らげ、衝撃を吸収し、五感を刺激して心身共に癒やしてくれます。
毎日過ごす住まいを木質感に包まれた空間にしたいという方も多いのではないでしょうか。
具体的には以下のような方法で木質感を高めることができます。
- 無垢床で木を楽しむ
- ウッドデッキで床の広がりを楽しむ
- 軒天に木を使う
- 家具や扉に木を使う
- 天井に木を張る
- 壁に木を張る
詳細について建築家が解説していきます。
無垢床で木を楽しむ
床材を無垢フロアにすると木質感がアップします。
床材は常に体と直接接していて、インテリアに最も影響を与える部材だからです。
床材は部屋全体に占める面積も多いためインテリアの雰囲気をほぼ決めてしまいます。床材でインテリアの方向性が決まるといっても過言ではありません。
また、足の裏や手のひらから床の素材感が伝わってきます。無垢床は見た目だけではなく触れる楽しみもあるのです。
それだけではありません。木は調湿効果で室内環境を整え、衝撃を和らげて足を疲れさせない効果もあります。
木は人を癒やす様々な効果を兼ね備えているのです。
樹種にこだわる
床材は樹種にこだわりましょう。
代表的な床材とその特徴は以下の通りです。
- オーク……最もポピュラーな床材。豊かな表情の木目が魅力。
- クリ……線路の枕木などにも使われる硬質な木材。独特の激しい木目が特徴。
- ウォルナット……世界三大銘木の一つ。シックなインテリアにおすすめ。白太と呼ばれる木目が濃淡を演出して天然木らしさを強調する。
- ブラックチェリー……シンプルですっきりした木目のためモダンなインテリアにマッチする。
- スギ……温かみとやわらかさが魅力の針葉樹。
- メープル……楽器などにも使用される高級木材。シンプルな木目が特徴。
床材選びは家づくりの大きな楽しみの一つです。
経年変化を楽しむ
無垢材は経年変化を楽しむことができます。
無垢材は色やけや退色が激しく、表情が変化するのが大きな特徴です。この経年変化こそが本物の天然木である証しといえます。
明るい色合いの木材は紫外線や照明の光で飴色に焼けていきます。それに対して、濃い色に塗装された床材は少しずつ色が明るく変わってきます。
また、無垢材は古くなっても傷んでも味になります。合板フロアやシートフロアではデメリットでしかない劣化も、無垢材なら変化を楽しむことができます。
各部屋の床はなるべくそろえる
部屋ごとに床材を変えるのもおもしろいですが、床材はなるべく統一しましょう。
建具を開けっ放しにしたときの違和感が少ないため、一体的な空間を作りやすくなるからです。
部屋の間仕切りをなくすと床がずっと続いているような空間の広がりを楽しむことができます。単純に掃除が楽なのもメリットです。
床材は変えなくても、部屋の個性は壁やカーテン、家具などで出すこともできます。
ウッドデッキで床の広がりを楽しむ
ウッドデッキを設けると床材の広がりを楽しむことができます。
ウッドデッキがあると床材が外まで続いているように見えるからです。
外部の使い勝手を向上させることがウッドデッキの目的ですが、視覚的なメリットもあります。
ウッドデッキをより効果的に使うためには以下の2点に注意しましょう。
- 床の方向とウッドデッキの方向を合わせる
- フラットレール仕様にする
床の方向とウッドデッキの方向を合わせる
床材とウッドデッキは貼り方向を合わせましょう。
貼り方向がそろっている方がより屋外と室内の一体感を感じるからです。
室内の床材の貼り方向にウッドデッキの貼り方向を合わせるのが一般的です。リビングは長手方向に床を貼る方が部屋が広く見えるため、ウッドデッキはリビングの長手に合わせましょう。
インテリア計画と外構計画の連携をして、ウッドデッキの貼り方向は床材方向にそろえましょう。
フラットレール仕様にする
ウッドデッキに面するサッシはフラットレール仕様にしましょう。
フラットレール仕様にするとサッシとウッドデッキにほぼ段差がなくなるからです。
通常のテラスサッシは雨水の排水を考慮して外側へ傾斜がついています。ここにウッドデッキを施工すると数センチの段差ができます。
数センチの段差があると一体感が損なわれるだけでなく、つまずきやすくなってしまったり掃除がしにくかったりします。
軒天に木を使う
軒天に木を使うと効果的に木質感を出すことができます。
なぜなら軒天は外壁の次に目立つ外装材だからです。
人の目線を考慮すると、実は軒天は屋根よりも目立ちます。とくに玄関扉の前などの軒天は距離も近く、質感がわかりやすいです。玄関ポーチの照明を壁付けのブラケットライトにして軒天をライトアップするのもおすすめです。
軒天材は明るい色を選ぶとより木質感が強調されます。天然木だとしても、濃い色に塗装された軒天材は質感がわかりにくいからです。下を向いている面なので、永久的に日影の面であることも忘れないようにしましょう。
雨がかからないのでメンテナンスも安心
軒天には雨がかからないのでメンテナンスも安心です。
外部で木を使用するのは劣化が心配という人もいるでしょう。外構の塀や外壁部材に木を使用する場合は確かに心配ですが、雨がかりの心配がない軒天は安心です。
本物の木を使用している以上数年に一度防腐剤の塗布は必要ですが、屋根や外壁ほどの手間もかかりません。
木調軒天材でも十分効果あり
本物の木を使用することに抵抗がある場合は木調天井でも十分な効果があります。
なぜなら軒天材は外壁材や玄関ドアと異なりある程度の距離があるからです。間近で見るわけではなく、直接触れるわけではないので、多少質感が低くてもそこまで気になりません。
軒天材はそのほとんどが窯業とよばれる材質でつくられています。窯業とは粘土、砂、石灰岩などを高熱処理して陶磁器、瓦、ガラス、セメントなどを生成したもので、強度や耐久性に優れます。
ちなみにこの窯業製品を加工し、着色して外壁材になったものがサイディングです。
窯業製品は木にと比較するとコストが安いため、コストダウンの意味合いでも窯業系軒天材はおすすめです。
室内から見える外装材
軒天材は室内から見える外装材です。
カーテンを開けて見える軒天材が質の高い木質部材だとインテリアの雰囲気もアップします。
また、室内の天井を板張りにして軒天と一体となるように計画することもできます。天井材を通して外部への広がりを強調できるので、デザインがよくなるだけではなく部屋が広く見えます。
さらにウッドデッキも計画すると床も天井も広がりを強調できます。
家具や扉に木を使う
家具や扉に木を使うのは当たり前のことでは?と感じる方もいるかもしれませんが、こだわって計画しないと家具や扉で木質間を出すことはできません。
なぜなら、一見木に見えても家具や扉に使用されているのはほとんど木調シートだからです。
コストやメンテナンスを考えてシートが多用されます。賃貸住宅では床材も全てシートを使用しているところも珍しくありません。
シートは耐水性がある点やメンテナンスが要らない点は良いですが、見た目、さわり心地ともに質感が劣ります。手に触れたときや光があたったときには顕著にそれがわかります。
床材とマッチする天然木を家具や扉に使用することで、木質間あふれるあたたかいインテリアになります。
メリハリも大事
かといってどこもかしこも木をふんだんに使用すれば良いという問題ではありません。メリハリをつけて木を使用することが重要です。
天然木を使用した家具や扉はシート張りのものと比較して金額が高いからです。全ての家具、全ての扉を天然木仕様にするとかなりの金額になります。
まずは目立つ部分から仕様変更をしてみましょう。下駄箱、リビングドア、テレビ台、ダイニングセットなどです。
玄関〜LDKは日常生活でよく使う場所ですし、家族以外にも目に留まりやすい場所なのでグレードアップをするにはおすすめです。
その次はトイレや洗面室をグレードアップすると良いでしょう。飲食店などに行った際、トイレをきれいに作りこんでいるととても格式が高く感じたことはありませんか。同じ理由で、水まわりをグレードアップすることで住宅全体のグレードを上げることができます。
板張り天井にする
天井に木を張って板張り天井にすることで木質感をより強調することができます。
なぜなら天井は床材と同じだけ面積があるからです。基本的には家具で隠れることなく常に見えるため、天井に木を張るとそのまま目に飛び込んできます。
木を張る面積は大きければ大きいほどインテリアに与える効果も大きくなります。なるべくシンプルな形で大きく範囲を決めるのが計画のコツです。
天井に木を張ることは、木質感をアップさせる最も有効な手段の一つといえます。
継ぎ目の処理を考える
部材の継ぎ目の処理を考える必要があります。
なぜなら部材の長さには限りがあるからです。範囲や貼る方向によっては部材を継ぐ必要が出てきます。
材料を継ぐ場合は継ぎ目をどのように処理をするかを決めておきましょう。専用の目地を入れるときれいに施工ができますし、目地材をあえてなくすとすっきりした印象になります。
また、どうすれば継ぎ目をなくすことができるかを考えてみるのも良いでしょう。張り方向を変えたり、範囲を調整したりすることで継ぎ目なしで計画ができる可能性もあります。
板張り天井をきれいに施工するためには継ぎ目の計画は欠かせません。
照明との相性を考える
板張り天井は照明との相性を考える必要があります。
なぜなら板張り天井にすると照明計画にかなりの影響がでるからです。
天井に木を張ると通常のシーリングライトやよくある白い縁のダウンライトは目立ってしまいます。天井の材質にもよりますが、シルバーやブラックの縁のライトがおすすめです。ダウンライトなどをいくつか配置する場合は、天井材とピッチを合わせることもわすれてはいけません。
壁に木を張りアクセントにする
壁に木を張ってアクセントにすると木質感が高まり、空間を引き締めてくれます。
全体に張るのではなく、アクセントで張るということがとても重要です。まわりに白い壁があることでより強調されて木の質感が目立ちます。
壁で計画する場合も天井同様、なるべく大きな範囲で四角い面に張るときれいです。このとき、コンセント、換気扇、エアコンなどの設備部材に注意しましょう。これらが同じ面にくると悪目立ちしてせっかくのアクセント壁が台無しになってしまいます。
テレビ裏や玄関ホール正面など、目立つ壁に木を張って木質感を高めましょう。
間接照明を組み合わせる
木質壁には間接照明を使用してライトアップしましょう。
木は光に照らされるとやわらかく光を拡散し、アクセント効果も強調することができます。
また、壁を照らす間接照明をコーニス照明は天井を照らすコーブ照明と比べて、ほこりがたまる水平面ができにくいという特徴があります。機能にも考慮した間接照明を計画できるのもおすすめのポイントです。
せっかく設けたアクセント壁は照明で照らして強調しましょう。
範囲はシンプルに大胆に
繰り返しになりますが、壁に木を張る範囲は大胆に計画しましょう。
コストを考えて、範囲を絞って少しだけ……となってしまうことは珍しくありませんが、少ない面積で木を張っても木質感は出ないしバランスもよくありません。
どうせやるなら最低3メートルくらいの範囲で考えましょう。範囲を小さくするくらいなら材質のグレードを落としてコストダウンをするという手もあります。
大きな面積で張らないと結局効果が発揮されずにもったいない計画になってしまいます。壁に木を張るなら、大きな壁に大きな範囲で計画しましょう。
まとめ
建築家がおすすめする木質感のある住宅をつくるポイントをご紹介しました。
木は昼間の強い日差しを吸収し、やわらかく拡散してくれます。無垢床に日差しが差し込んだときにできる光と影のコントラストはとてもきれいです。
そして夜は蓄えた熱で空間をあたたかくつつみます。落ち着いた木目は照明に照らされてぼんやりと浮かび上がります。
木に囲まれた家は空間をやわらかくあたたかくして森の中で暮らしているような安らぎを与えてくれます。