前回は平屋のメリットについて解説しました。
平屋のメリット6つ
- 平屋は地震に強い
- 平屋はコストが安い
- 平屋は動線が良い
- 平屋は一体感がある
- 平屋は勾配天井にできる
- 平屋は子ども部屋の使い勝手が良い
引き続き、今回はデメリットも解説していきます。
平屋のデメリット5つ
- 平屋は広い土地が必要
- 平屋は日当たりが悪い
- 平屋は防犯性が低い
- 平屋は布団が干し辛い
- 平屋は水害に弱い
平屋は魅力の多い計画ではありますが、当然デメリットもあります。あらかじめ把握しておき、後悔のないように計画を進めていきましょう。
平屋のデメリット1.広い土地が必要
平家のデメリットは広い土地が必要なことです。
平屋は2階建てよりも1階部分の面積が大きくなるからです。
土地の利用の仕方を考えたとき、建物を建てるスペース以外に駐車スペース、庭スペースが必要です。土地の広さが十分でなければいずれかのスペースが狭くなってしまいます。
建物を削ると部屋数や部屋の広さが不足して住み心地や使い勝手に支障が出てきます。
駐車スペースを削るといざという時に路駐をしなければいけない事態になるかもしれません。
庭スペースが少ないと庭でできることが限られる以外に、日当たりが悪くなるということも考えられます。
平屋を計画するときは、建物、駐車場、庭がそれぞれ十分なスペースを取ることができるかを確認しましょう。
建ぺい率に注意
平屋を建てるときは建ぺい率に特に注意する必要があります。
建ぺい率とは土地面積に対する建物の面積制限です。平屋は2階建てに比べて1階部分の面積が大きくなるため、建ぺい率に抵触しやすくなります。
建ぺい率は一般的には都市計画で50〜80%の範囲で定められています。道路条件や行政指定により別途定められていることもあるので、土地探しをする際は注意しましょう。
また、カーポートや外部倉庫も面積にカウントされるので注意が必要。建物はなんとか建てられたけど、建ぺい率オーバーで希望していた倉庫が置けなかったというようなことにならないようにしましょう。
採光計算に注意
平屋は採光計算にも注意が必要です。
採光計算とは居室で行わなければいけない採光がきちんと取れているか、の計算です。窓の面積や高さ、隣地境界線からの距離などを計算に用います。
窓が大きいほど、また隣地境界線からの距離が大きいほど採光は有利になります。
平屋の場合は隣地境界線ギリギリの位置に居室を配置することも珍しくないため、採光計算がアウトになることも少なくありません。
実際の計算式は複雑で地域ごとに変わる係数もあるため一概は言えませんが、平屋の場合は屋根先(雨樋先)から隣地境界線までの距離を60センチほど確保すれば採光計算はクリアすることが多いです。
壁の中心から屋根先(雨樋先)までの長さを90センチだとすると、隣地から150センチは空けておく必要があります。
換気計算に注意
採光計算に加えて換気計算にも注意が必要です。
換気計算とは、居室に対して十分に換気ができる窓が設けられているかの計算です。
部屋の広さ、窓の面積、形状などが計算に用いられるのですが、ここで注目したいのが隣地境界線までの距離です。
屋根先から隣地境界線までの距離が250確保されていないと(行政によっては300)換気上有効な窓と認められないことがあります。
つまり、屋根が隣地境界線を超えないギリギリの位置で建物を配置すると換気計算がアウトになってしまいます。
平屋のデメリット2.日当たりが悪い
平屋は日当たりを確保するのが難しいです。
その理由は、平屋の方が南側の隣家との距離が近くなり、隣家の影の影響を受けやすくなるからです。
日当たりを確保するときは南側の庭の広さが重要です。南側を大きく空けることで隣家との距離を確保することができ、室内には日差しが差し込みます。
しかし、平屋の場合は1階部分の面積が大きいため南側を簡単に空けることができません。面積がとても広い、南側道路などの敷地条件なら問題ありませんが、たいていの場合は検討が必要になります。
日が当たらない部屋がでてくる
平屋の場合は日が当たらない部屋がいくつかでてきます。
2階建てに比べ、南側に配置できる部屋が少なくなるからです。
普段よくいるLDKを南側に配置すると、あと一部屋くらいしか南側にすることができません。和室、寝室、子ども部屋の使い方を考慮し、優先順位を決める必要があります。
もちろん建物を東西に延ばし、横長の形状になれば南側の居室を増やすことができます。しかし、極端に間口の大きい建物は敷地に入らなかったり、坪単価が割高になったりする可能性があります。
南道路は平屋に最適
南道路の土地は平屋には最適の敷地条件です。
なぜなら南道路は隣家の影の影響を受けづらいからです。
南側の庭があまり広く取れなかったとしても、南側が道路なら日当たりへの影響は少ないです。
それに対して、南側に隣家がある場合は最低5メートルほど隣家から離れていないと冬場の日当たりはのぞめません。
土地が狭くて平屋を諦めるケースはよくありますが、南道路ならまだ諦めるのは早いかもしれません。
平屋のデメリット3.防犯性が低い
平屋は防犯性が低くなります。
2階部分に比べて1階部分の方が外から侵入されやすいからです。
2階が寝室の場合は窓を開けて寝てもある程度安心ですが、1階が寝室の場合は同じように窓を開け辛いですよね。
また、2階建てと違ってベランダがないため、外出時や夜間時に外に洗濯物が干し辛いという特徴もあります。
防犯性は意外と見通しがちです。平屋にする際は周辺環境も踏まえた上で防犯性が問題ないかも考えましょう。
オープン外構で防犯性能を上げる
防犯性を上げるためにはオープン外構、つまり高い塀などで囲ってしまわない外構計画にすることが大事です。
道路や隣地から死角ができると防犯性が下がるからです。見えるということが1番の防犯対策になります。
泥棒は侵入に5分以上かかるとそのほとんどが諦めるというデータがあります。これは5分以上ドアや窓の前で不審な行動をしていると目立ってしまうという
しかし、塀で囲って死角をたくさん作ってしまうと周りから見えにくくなるため、泥棒にとって都合の良い環境を作ってしまうのです。
逆説的なようですが、オープン外構にした方が防犯性は上がります。
その他の防犯対策
その他の防犯対策としては以下が考えられます。
- 防犯ガラスを使用する
- セキュリティシステムを導入する
- 窓を減らす
- 窓を高窓にする
- 建物まわりを砂利敷きにする
防犯ガラスにする
防犯ガラスにすると防犯性能がアップします。
防犯ガラスは防犯フィルムを貼っているため、ガラスが割れても突き破れないからです。
泥棒は窓から侵入するとき、ガラスを割ってから解錠して窓を開けます。鍵がある部分を狙ってそっとガラスを割るという手口がほとんどです。
防犯ガラスはガラスを突き破るのに手間がかかり時間を稼ぐことができるため、侵入を阻止できる可能性が高くなります。
セキュリティシステムを導入する
セキュリティシステムを導入すると防犯性能がアップします。
セキュリティシステムは、
- 窓センサー
- 空間センサー
- 防犯カメラ
が主要な設備です。
セキュリティをオンにしている状態で異常を察知すると警備会社に通報がいくシステムなので、外出時や在宅時の不安はかなり少なくなります。
窓を減らす
窓を減らすと防犯性能はアップします。
泥棒は窓から侵入してくるからです。窓の数だけリスクがあると言っても過言ではありません。
水まわりや物入れなどの窓は無くしても問題ないことがあります。窓を減らすと戸締まりや掃除の場所が減ることや、建築費用が安くなることもメリットです。
防犯性能を上げるためにもなくせる窓がないかを検討しましょう。
窓を高窓にする
窓を高窓にすると防犯性能が上がります。
高窓からの侵入は難しいからです。どうしても無くしたくない窓は高窓に変えるという手があります。
高窓は上部からやわらかい光が入ってくるので採光上も便利です。
建物まわりを砂利敷きにする
建物まわりを砂利敷きにすると防犯性がアップします。
砂利敷きにすると、砂利の上を歩くたびに音がするからです。
泥棒はまわりの目を何より気にします。まわりから見られやすい、まわりから気付かれやすい状態を嫌がるため、歩くたびに音がする砂利は防犯に効果的です。
また、砂利にすることで雑草対策にもなります。砂利の下に防草シートを敷くとより効果的です。
砂利はコストをかけずに防犯効果をもたらし、メンテナンスを楽にしてくれる計画です。
平屋のデメリット4.布団が干し辛い
平屋は布団が干し辛いです。
なぜならベランダがないからです。ベランダの手すりは布団干しに最適ですが、平屋は別の方法を考えなければいけません。
フェンスや手すりを利用するほか、量販店で布団干しスタンドを購入する方法があります。後々苦労しないよう、あらかじめどこでどうやって干すかを決めておきましょう。
ちなみにウッドデッキがあると布団干しが楽です。部屋からスムーズに外へ出ることができ、土汚れなどを気にせずに布団干しができます。
物干し金物を利用
物干し金物を利用して布団干しができます。
物干し金物は壁や軒天に金物を取り付け、物干し竿を通して使用する商品です。重さのある敷き布団は竿がもちませんが、シーツや毛布、掛け布団などは物干し竿で干すことができます。
窓の横や外壁部分に取り付けられる場所がないか探してみましょう。このとき、換気扇の下につけてしまわないように注意が必要です。
室内干しが人気
最近は室内干しをメインに考える方も増えています。
室内干しは急な雨に濡れることもなく、ほこりや花粉がつきにくくクリーンに物干しができます。
布団の場合は室内に物干しスタンドを組むことになるのである程度のスペースが必要です。
また、室内でも干さずに乾燥機で乾燥させる、ほこり、ゴミ、ダニは掃除機で吸い込むという手もあります。
室内干しであれば平屋でも2階建てでも条件は変わりません。
平屋のデメリット5.水害に弱い
平屋は水害に弱いです。
理由は言うまでもなく、2階という逃げ場がないからです。豪雨のとき、2階建ての場合は最悪荷物を2階に避難させる、2階で寝るという選択肢がありますが、平屋の場合は浸水時に逃げ場がありません。
水害が心配な地域で平屋を建てる際は、過去の水害やハザードマップをチェックしましょう。そのうえでGL(建物まわりの庭の高さ)をできるだけ高くして、少しでも安心できるような設計が必要です。
避難グッズの常備や避難所の確認なども必要です。
昨今は毎年水害のニュースを目にします。水害対策は必ず考えておきましょう。
道路面から床までの高さは?
道路面から床までどれくらいの高さかを計算しましょう。
水害対策を考えるうえで、最低限把握をしておく必要があるからです。
一般的には建物まわりの地盤から建物の床までは55センチほどです。つまり、道路から地盤面までの高さプラス55センチが道路面から床までの高さになります。
どれくらい必要かは当然地域により様々ですが、大雨のときに道路が冠水するようなエリアであれば道路面から床まで1メートルはほしいところです。
また、駐車場も高さも考え、車が水害を逃れることができるかどうかも考えましょう。
被災地で大活躍する水抜きスリーブ
水害を受けたエリアでは、基礎に設けた水抜きスリーブが大活躍します。
床下に泥水が入り込んだ際、水抜きスリーブから排水できるようにするためです。排水が容易であれば高圧洗浄機で掃除を行うこともできます。
反対に、水抜きスリーブがなければポンプで排水を行い、泥の掃除は手作業になってしまいます。高圧洗浄機を使用して自然に排水する場合と比べると、手間に雲泥の差が出ることは言うまでもありません。
被災後の復旧のことも考え、水抜きスリーブを計画しましょう。
火災保険で対策を
火災保険で水害の復旧工事費用を賄うことができます。
火災だけではなく、水害、落雷、風災などの自然災害や、盗難、破損、汚損まで適用範囲に入っている商品もあります。
保険料を考えたうえで検討をする必要があります。
まとめ
平屋は魅力も多いですが、注意点も多い計画です。
メリットだけではなく、デメリットにも目を向けてあなたの家づくりは平屋が適切なのかを判断しましょう。