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建築コラム

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平屋

2023.01.11

建築家が平屋について考える。メリットとデメリットを徹底解説!メリット編

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住宅といえば二階建てが最も一般的ですが、最近は平屋の人気も高まっています。


平屋人気が高まっている理由は、当然ながら平屋にはたくさんのメリットがあるからです。しかしながら平屋よりも二階建ての家の方が多い理由は、デメリットや計画のしにくさも持ち合わせているからといえます。


そこで、建築家が考える平屋のメリットとデメリットを以下にまとめました。家づくりを検討している方の参考になれば幸いです。


平屋のメリット6つ

  1. 平屋は地震に強い
  2. 平屋はコストが安い
  3. 平屋は動線が良い
  4. 平屋は一体感がある
  5. 平屋は勾配天井にできる
  6. 平屋は子ども部屋の使い勝手が良い

平屋のデメリット5つ

  1. 平屋は広い土地が必要
  2. 平屋は日当たりが悪い
  3. 平屋は防犯性が低い
  4. 平屋は布団が干し辛い
  5. 平屋は水害に弱い

まずはメリットから解説していきます。


平屋のメリット1.地震に強い


平屋は地震に強いという特徴があります。


その理由は2つあります。

1つ目は重さです。建築物は高さが低い方が軽くなります。地震の衝撃の大きさは重さと加速度の掛け算で決まります。つまり、軽ければ軽いほど地震の際に生じる衝撃は小さくすみます。

2つ目は階数です。階数は少ないほうが階層ごとに生じる変形が小さくなります。3階建て、4階建てと階数が大きくなればなるほど強い建築物をつくる難易度が高くなるのはなんとなくわかりますよね?これは階層ごとに生じる変形は階数が多くなるほど激しくなるからです。


実際に2階建ての1階部分の柱は2階と小屋裏の荷重を受けているのに対し、平屋の柱は小屋裏部分の荷重しかかからないため必要な柱の本数も全く異なります。壁量や梁のスパンなど、間取りの自由度においても平屋の方が有利です。


地震に強い安全な家を建てたい方に平屋はおすすめです。

耐久性も考える


地震に強い家をつくるときは耐久性も考慮しましょう。


どれだけ強くても、その状態が長持ちしなければ意味がないからです。新築時に強くても、年々劣化して強度が落ちてしまうといざ大きな地震が来たときに耐震性が発揮されません。


具体的には、

  • 床下、壁体内、小屋裏の換気を十分に取る
  • 紫外線で劣化する外装部材は定期的にメンテナンスを行う
  • シロアリ対策を行う

などの処置が必要です。


建築は劣化するのが当然ですが、耐久性を高めて劣化を遅らせることが重要です。

木造以外もシロアリ対策は必須


意外に思われるかもしれませんが、木造以外の建築物でもシロアリ対策は必要です。


なぜなら構造躯体が木造でなくても、床や壁の内部は木が使用されているからです。シロアリの被害を受けると床や壁の下地がボロボロになります。


また、シロアリのあごはとても強靭。エサの木のためならコンクリートもかみ砕くため、鉄筋コンクリート造の建物でさえもシロアリの被害を受けてしまいます。


建物を長持ちさせるためにはシロアリ対策は必須です。

平屋のメリット2.コストが安い


意外に思われがちですが、平屋は建築コストが安くすみます。


その理由は、平屋は2階建てよりも延べ床面積を小さく抑えることができるからです。間取りによっては、部屋数や部屋の広さを変えずに3〜4坪ほど小さくすることができます。


コストダウンにはいくつかの方法がありますが、建物の面積を小さくするのが最も効果的です。平屋にすることで単価は高くなりますが、それ以上に面積が小さくなるため建築コストは下がります。


平屋や建築費用が高くなるというイメージは間違いです。


単価と面積について


単価と面積について説明します。


坪単価という言葉をよく耳にすると思いますが、建築費用はほぼ坪単価×面積(坪数)で決まります。つまり、建築のコストを抑えるためには坪単価か面積のいずれかを下げるしかありません。


平屋の場合、2階建てに比べて坪単価は高くなります。平屋の方が基礎の面積も屋根の面積も大きいためです。しかし、それ以上に面積を抑えることで


その他のコストダウン方法


平屋で計画すること以外に有効なコストダウン方法について以下にてご紹介します。

廊下を減らす


廊下を減らすとコストダウンが可能です。


なぜなら、廊下を減らすことで延べ床面積を削減することができるからです。


延べ床面積を小さくしようとするとき、部屋数を減らしたり部屋の広さを小さくしたりすると、建てた後に後悔するかもしれません。でも、廊下をなくしてもそこまでの不便はなさそうです。


無駄な廊下はどんどん削りましょう。

間仕切りを減らす


さらにコストダウンをするために無駄な間仕切りをなくしましょう。


家自体が高断熱であれば間仕切り壁はなくても部屋は寒くありません。音やにおいなどの問題さえクリアすれば間仕切りは省略できます。


たとえば以下の箇所は間仕切り壁や建具がなくても問題ないかもしれません。

  • 玄関ホールとリビングの間仕切り
  • ウォークインクローゼットの建具
  • 子ども部屋の建具
  • 階段の建具

なんとなく設けているだけの間仕切りならなくせないかを考えてみましょう。


不要なサッシ、建具を減らす


不要なサッシ、建具を減らしましょう。


サッシや建具は意外と高いからです。サッシや建具の計画を見直すだけで数十万円のコストダウンになることも珍しくありません。


特に最近は高断熱のサッシや高機能の建具が一般化しているためなおさらです。


サッシの場合は、日当たり、採光、通風のどの役割も果たしていない箇所がないか探しましょう。隣家の窓、換気扇、室外機、給湯器の前にある窓はなおのこと存在意義が少なそうです。建具の場合は、寝室、水まわり以外の箇所は全てなくせないか考えてみましょう。

平屋のメリット3.動線が良い


平屋はスムーズな動線を確保しやすいという特徴があります。


理由は階段がなく、同じフロアに全ての部屋があるからです。


たとえば、洗濯一つとっても、洗う、干す、畳む、収納するが全て同じフロアでできます。洗うのが1階で干すのは2階、畳むのは1階で収納は2階だと家事動線が長くなり使い辛いです。


平屋は生活動線が短縮できるので、家事や日常のストレスが少なくなります。


また、さらに動線を良くする方法もあります。

その方法は2点。回遊動線と直線動線です。

回遊動線を設ける


回遊動線を設けると動線はよりスムーズになります。


その理由は2つあります。


1つ目は2方向からアクセスが可能になるからです。たとえば冷蔵庫に飲み物を取りに行くとき、キッチンで料理をしている家族が邪魔で通りにくいときがあります。このとき回遊動線があれば反対側からまわって冷蔵庫へ行くことができます。


2つ目は行き止まりがなくなるからです。物をとったり掃除をしたりという日常の動きのなかで、行き止まりで引き返すことが少なるため動線がスムーズになります。


回遊動線を設けると、ストレスなく家事を行い、快適な動線で生活をすることができます。


家事動線は直線に


回遊動線とあわせて、家事動線は直線にすることを心がけましょう。


まっすぐでシンプルな動線にすることで家事がやりやすくなるからです。いくら回遊できても、くねくねと曲がっている動線が使いやすいはずもありません。


具体的に効果的なのは、

  • キッチンからパントリーへの動線
  • 脱衣所から物干しまでの動線
  • 物干しから収納までの動線

などです。


直線の動線でシンプルに構成された間取りは壁のラインがすっきりしているため、構造やコスト面においても有利です。

平屋のメリット4.一体感がある


平屋には特有の一体感があります。


なぜなら全ての部屋が同じ階の近い場所にあるからです。


リビングにいても子ども部屋で遊んでいる気配を感じることができ、寝室にいても家族が外から帰ってきたことがわかります。

また、どの部屋にもすぐにいけるため片付けも掃除もはかどります。


それはまるでアパートやマンションのような感覚です。賃貸が手狭になって家を建てる方は多いですが、意外と賃貸が使いやすかったという声もよく聞きます。


これは賃貸住宅が部屋間の距離が短く、各部屋の一体感が強いからでしょう。


建具は引き戸にして開け放しにする


より一体感を感じる空間にするためには建具を引き戸にすると効果的です。


引き戸は開き戸よりも開けっ放しにしやすいか

です。


開き戸は開いていても90度の位置に建具が残るため邪魔になります。レバーに物や服が引っかかることもあるでしょう。

これに対して引き戸は開けているときに完全に存在感がなくなります。


各部屋の建具を開けっ放しにしやすい引き戸に一体感のある空間をつくることができます。

床材と貼り方向はなるべくそろえる


各部屋の床材や貼り方向はなるべくそろえましょう。


その方が建具を開けたときの一体感がより強調されるからです。


床材や貼り方向が一緒だと、どこまでも続くような広がりを感じる空間になります。それに対して床材や貼り方向が異なると、つながっていても分断されているように見えてしまいます。


床を統一してつながりを意識するだけで空間はより大きく魅力的に見えます。

平屋のメリット5.勾配天井にできる


平家は天井を勾配天井にすることができます。


小屋裏空間を利用することができるからです。寄棟や切妻の屋根形状の場合は小屋裏空間にスペースが生まれます。


リビングや居室を勾配天井にすると、吹き抜けのような開放的な空間になります。勾配天井にすることで床面積を広げなくても部屋を広く見せることができます。


勾配天井は2階建てではできない平屋ならではの計画なのでおすすめです。

ロフトをつくれる


平屋はロフトをつくることもできます。


ロフトは勾配天井同様小屋裏空間を利用する計画です。天井高さを140センチ以下に抑えることで階数にはカウントされずに、小屋裏空間に床面積を増やすことができます。


ロフトは収納や遊び空間として機能するだけでなく、勾配天井を介して居室とつながるため開放的な空間を作ってくれます。


開放感と遊び心と機能性を同時に満たすのがロフトの魅力です。


平屋のメリット6.平屋は子ども部屋の使い勝手が良い


平屋は子ども部屋の使い勝手が良いです。


これは子ども部屋が階段を経由しないためです。リビングから近い位置にある子ども部屋は様々な使い方を考えたときに重宝します。


階段を上がって子ども部屋のほうがプライバシーは確保されやすいです。しかし、それ以外の使い勝手の面では課題が多く残ります。


おもちゃ部屋、予備部屋という観点から見ていきましょう。

おもちゃ部屋としての子ども部屋


子どもがまだ小さい間は子ども部屋としては機能しないので、ほとんどの場合おもちゃ部屋として利用されます。


このとき、おもちゃ部屋はリビングの近くにある方が便利です。理由は3つあります。


1つ目の理由は子どもが勝手に遊んでくれることです。階段を上がった2階は大人がいないと怖がっていかないことが多いです。結局一緒におもちゃ部屋まで行くことになるので、家事がはかどりません。


2つ目はリビングか片付くこと。結局おもちゃ部屋で遊ばなければリビングで遊ぶことになります。すると、リビングはおもちゃであふれ、毎日の片づけが大変になります。おもちゃ部屋ならある程度散らかっていても片づける必要はないかもしれませんが、リビングはそういうわけにはいきません。


3つ目は遊んでいる姿に目が届きやすいことです。仮に一人やお友達同士で遊んでいたとしても、目が届かないところだと少し不安になります。危険なことはしていないか、嫌なことを言っていないか、近くであれば耳を傾けるだけで確認ができます。


おもちゃ部屋はリビングの近くにあるほうが何かと便利です。


予備部屋としての子ども部屋


子ども部屋が予備部屋になることも少なくありません。


子ども部屋が子ども部屋として活躍するのは10〜18歳までの約8年間だからです。その前後、子ども部屋は別の目的で使用されることが多いでしょう。


書斎など、集中して作業を行う場合はリビングから離れたほうがはかどるかもしれません。しかし、セカンドリビング、物干し、トレーニングルームなどで使用することを考えると、なるべくメインの生活スペースの近くにある方が使い勝手はよさそうです。

まとめ


建築家が考える平屋のメリットをご紹介しました。


平屋に限らず、計画にはメリットとデメリットがつきもの。良い家にするために重要なのは、メリットデメリットをどちらも把握したうえで、自分たちにはどのような家づくりがあっているかを検討することです。


今回のメリットだけでなく、デメリットも知ったうえで計画を進めましょう。

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