家を建てるとき、建築会社選びは誰でも迷うと思います。
そのとき、
「なぜハウスメーカーは高いんだろう?」
「なぜ工務店は安いんだろう?」
という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、大手ハウスメーカーで家を建てることのメリットとデメリットを建築家がご紹介します。
なぜハウスメーカーは金額が高いのか、工務店と設計事務所との違いは何なのかといった疑問を解決します。
ハウスメーカーで家を建てるメリット
ハウスメーカーで家を建てるメリットは以下の通りです。
- 長期保証システムがある
- 打ち合わせや施工がしっかりしている
- 会社がなくなる可能性が低い
- アフターメンテナンス体制がしっかりしている
以下にて解説します。
長期保証システムがある
ハウスメーカーは長期保証システムを行っているケースが多いです。
一般的には住宅の建築後10年間、構造と雨漏りの瑕疵は建築会社が責任をもたなければいけません。これは瑕疵担保責任履行法という法律で定められており、建物の構造や雨漏りに関する欠陥や不具合は責任をもって修繕や補修を行う必要があります。
ハウスメーカーは高耐久の外装材や施工方法、メンテナンス条件を定め、この10年の保証を延長しています。20〜30年の長期保証も珍しくなく、長いところは60年というハウスメーカーも存在します。
また、内装や設備などについて、メーカー保証がなされる場合もあります。特に設備は住んでからのメンテナンスコストを抑える意味合いではとても有効です。ただし、自然災害や改造・改修による損傷、定期的なメンテナンス不備などによるトラブルには保証が及ばない場合があります。また、保証対象外とされる項目については、契約書などに明示されているため、事前に確認が必要です。
消費者としては長期保証があると安心して住宅に住むことができるため、長期保証はハウスメーカーの大きなメリットです。住宅購入時、ハウスメーカーの長期保証システムは重要なポイントの一つとして押さえておくと良いでしょう。
打ち合わせや施工がしっかりしている
ハウスメーカーは打ち合わせや施工がしっかりしていることが多い、といえるでしょう。
ハウスメーカーは、住宅の設計や施工をシステム化し、一定の品質を保証する体制を整えていることが多いからです。会社が大きければ大きいほどサービスや品質のばらつきが出やすいため、社内の規定を設けることで一定の基準を保っています。
しかし、全てのハウスメーカーが同様の品質を保証できるわけではなく、個々のハウスメーカーの施工品質には差があることも事実です。また、打ち合わせや施工がしっかりしているからといって、必ずしも全てのトラブルを回避できるわけではありません。施工ミスや素材の不良など、住宅におけるトラブルはさまざまな要因から発生するため、消費者側でも事前に情報収集や検討を行い、十分な判断をする必要があります。
ハウスメーカーは一般的には打ち合わせや施工品質が高く、打ち合わせ中も工事中も安心できます。
会社がなくなる可能性が低い
ハウスメーカーが倒産するリスクは、一般的には比較的低いと言えます。
大手のハウスメーカーは規模が大きく、資本金も多いためです。顧客リストもたくさん持っており、安定した経営をしている会社が比較的多いでしょう。
アフターメンテナンスやリフォームの相談を考えると、多くの消費者が安心して住宅購入を検討することができます。長年の実績や信頼性はそれほど重要な要素です。
ただし、過去にはハウスメーカーの倒産事例もあり、完全にリスクがないわけではありません。また、ハウスメーカーが倒産した場合、消費者にとっては大きなトラブルとなる可能性があるため、アフターサービスなどの保証内容についてはしっかり確認しましょう。
アフターメンテナンス体制がしっかりしている
ハウスメーカーは、住宅の品質保証やアフターサポートに力を入れている企業が多いため、充実したアフターメンテナンス体制を整えています。
具体的に行われている取り組みは以下の通りです。
長期保証制度
前述の通り、ハウスメーカーによっては、建物の完成後数年間にわたって、不具合やトラブルに対して無償修理や対応を行う長期保証制度を設けている場合があります。
アフターサポート窓口
ハウスメーカーによっては、住宅に関する相談や修理依頼を受け付けるアフターサポート窓口を設けている場合があります。この窓口を通じて、専門のスタッフが的確なアドバイスやサポートを行うことができます。
定期点検・メンテナンス
住宅の状態を定期的に点検し、必要に応じて修繕やメンテナンスを行うことで、住宅の長寿命化や快適な居住環境を保つことができます。
トラブル対応
住宅にトラブルが発生した場合には、迅速かつ適切に対応することが求められます。ハウスメーカーでは、トラブルが発生した場合には、迅速に対応するための体制を整えています。
これらの取り組みにより、ハウスメーカーは、住宅を購入した後も安心して暮らすことができるようなアフターメンテナンス体制を整えています。
ハウスメーカーで家を建てるデメリット
大手ハウスメーカーを利用することにはメリットがありますが、一方でデメリットもあります。
- 建築費用が高い
- 設定資材が限定されている
- 同じようなデザインになる
- 設計の自由度が低い
以下にて解説します。
建築費用が高い
ハウスメーカーは建築費用が高いところが多いです。同じ規模の家でも、工務店と比較すると数百万円の差が出ることも珍しくありません。
ハウスメーカーの建築費用が高い理由は、以下のような要因が挙げられます。
スタッフが多い
ハウスメーカーの経営にはたくさんの経費がかかります。
営業担当や設計士だけでなく、インテリアコーディネーター、ショールームアドバイザー、CAD担当、事務など、たくさんのスタッフを雇っていたり、広告宣伝費や展示場出店にも多額の投資をしていたりするところがほとんどです。
広告費や人件費は当然経費としてかさんでくるため、企業の存続のために建築費用がふくらみやすくなるのは必然といえるでしょう。
品質や性能の保証
ハウスメーカーは、自社で品質管理や施工管理を行い、住宅の品質や性能を保証しています。そのため、高い技術力、研究費、人件費が必要になります。
品質を追求するあまりオーバースペックになることや、予算オーバーになってしまうことも珍しくありません。
材料や設備の選定
ハウスメーカーは、住宅の品質や性能を保証するため、高品質な材料や設備を使用することが多々あります。当然ながら、その分の費用がかかります。
もし望んでいないところまでハイグレードになっていたら、もったいないコストの使い方になっているかもしれません。
規制や法令の遵守
ハウスメーカーは、建築基準法や省エネルギー基準などの法令や規制を遵守することが求められるため、その分のコストがかかります。
もちろん法令を遵守することは当然のことです。しかし、国や自治体の推奨通りの家にすると建築費用がかさんでくるのも事実。法律の制限の範囲内でコストも考慮し、効率の良い設計をすることはとても重要です。
ハウスメーカーはその社会的信頼性から、過剰なスペックで設計をしてしまうことも珍しくありません。
設定資材が限定されている
一般的に、ハウスメーカーはオリジナルのメーカー部材や自社で設計・製造した建材を使用することが多く、設定資材品が限られています。そのため、顧客が自由に部材を選ぶことができない場合があります。
もちろんこれにはメリットもあります。ハウスメーカーが提供する建材や部材は、設計や製造において長年の経験とノウハウを積み重ねてきたものが多く、品質や信頼性に優れていることが多いです。また、ハウスメーカーが提供する部材は、施工工程や構造に合わせて設計されていることが多いため、施工のミスが少なく、建物全体の品質が安定していることも特徴の一つです。
ただし、自由に資材を選んで理想の家にしたいという方にとってはデメリットになることケースが多いです。一部のハウスメーカーでは、設定資材の変更ができないこともありますし、変更するには割高な費用が必要な場合もあります。
ハウスメーカーを検討するときは、資材が限定されていることが自分にとって有利か不利かを考える必要があります。
他の家と似たデザインになる
ハウスメーカーで家を建てる場合、同じ会社で建てた人と似たような外観やインテリアになる可能性が高いです。
ハウスメーカーは一定のデザインや間取りのプランを提供している場合が多いためです。また、ハウスメーカーは大量生産体制で建設を行ってコスト削減や品質の均一化を図っています。
個性を出そうとすると、ハウスメーカーは少し不利かもしれません。
もちろんハウスメーカーでも自由な設計提案やカスタマイズのオプションを提供している場合もあるので、確認をしてみましょう。その際は費用も確認し、コストパフォーマンスの検討も忘れてはいけません。
設計の自由度が低い
ハウスメーカーは設計の自由度が高くないことが多いです。
その理由は、ハウスメーカー独自の設計ルールに基づいて設計を行うためです。施工効率や品質、安全性などを確保するための規格は、ときには自由な発想や面白いプランの邪魔をしてしまうことがあります。
また、ハウスメーカーは量産型の住宅を提供しているケースが多く、ある程度決められたプランやデザインを提供することで、製造コストを抑え、安価に提供することができます。そのため、個々の希望に合わせた設計になると、製造コストが高くなってしまい、価格が上昇してしまう可能性があります。
建築基準法や地方自治体の条例などに加え、ハウスメーカーとしての設計ルールが自分たちの希望に反するものでないか確認する必要があります。
安心して家を建てるために必要なこと
ハウスメーカーといえど、安心して家を建てるためにはしっかりと会社や家の性能をリサーチし、自分たちの希望を叶えることができるかを検討することが重要です。
安心して家を建てるためには以下のことが重要です。
- 性能表示制度を利用する
- メンテナンススケジュールを確認する
- 実際に建った家を見学する
以下にて解説します。
性能表示制度を利用する
性能表示制度を利用すると建物の性能を見える化できます。建物の性能が見えると安心して家を建てることができます。
「建築物の省エネ性能の表示に関する法律」に基づき定められた住宅の性能表示制度では、住宅の性能を定量的に評価し、エネルギー消費量や断熱性能、換気性能などを表示することができます。
たとえば、耐震性能なら最大3つ星で、省エネ性能なら最大7つ星で住宅の性能を評価しています。性能評価制度を利用した住宅は、設計業務を行った建築会社が建築主に対して、性能等級が記された書面を説明することが義務付けられています。そして評価するのは国から指定された第三者機関なので、安心して性能を確認することができます。
性能表示制度を利用することは建築業者にとっても、性能表示に基づく競争が促され、住宅の性能向上が期待できます。このことからも、性能表示制度を利用することで、建築主は住宅の性能を適切に把握して安心して住宅を建てることができるでしょう。
メンテナンススケジュールを確認する
メンテナンススケジュールをあらかじめ確認しておくことは、家に住む上で非常に重要です。
なぜなら、どのような家でもメンテナンスは必要だからです。家は時間とともに劣化していきますので、定期的なメンテナンスを行うことで、建物の寿命を延ばし、住み続けるための安全性を確保することができます。
このとき、メンテナンスには多額の費用がかかる可能性があります。それをあらかじめ把握しておかなければ、住んだ後、思いもよらないタイミングでメンテナンス費用を捻出しなければならなくなってしまうこともありえます。
建築会社や施工業者などが提供するメンテナンススケジュールには、屋根や外壁、床、窓、ドア、給排水管、電気設備などの点検・修繕時期が記載されています。
このスケジュールに沿って、定期的に点検・修繕を行うことで、問題を早期に発見し、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。長期的に見れば、建物を維持するためのコストを抑えるためにも、定期メンテナンスは重要です。
スケジュールに基づいた定期的なメンテナンスを行うことで、安心して家に住み続けることができます。
実際に建った家を見学する
実際に建った家を見学することで、気づくことはたくさんあります。
モデルハウスと違い、完成した実際の住宅はリアルな生活をイメージできる間取りであり、過度なグレードアップがされていない仕上がりであることが多いからです。
写真や図面だけでは伝わりにくい、実際の広さ、光や風の入り方、収納の使い勝手などを確認することができます。また、建て主の方に実際に住んでいる感想や、メンテナンスの仕方なども聞くことができ、自分たちに合った家づくりの参考になります。
また、建築現場に行くことも参考になります。施工の様子や工程の進み具合なども確認でき、施工品質や安全性の確認もできます。さらに、家づくりに関する疑問点や不安な点などがあれば、直接担当者に聞くことができます。
これらのことから、家を建てる前に完成した住宅を見学することは、安心して家づくりを進めるために重要なポイントの一つとなります。
まとめ
大手ハウスメーカーで家を建てることのメリットとデメリットをご紹介しました。
大手ハウスメーカーと建築家、どちらで家を建てたほうが良いかは人それぞれです。保証や起業の信頼性を重視するなら大手ハウスメーカー、設計や部材選択の自由度を重視してこだわりの家づくりを楽しみたいなら設計事務所に依頼して、建築家と家づくりをすることをおすすめします。
ハウスメーカー、工務店、設計事務所、それぞれのメリットを考慮したうえで建築会社を選択しましょう。