今、木造住宅へ注目が集まっています。
理由は資材の高騰と環境負荷です。元々日本に建っている住宅のほとんどが木造ではありますが、材料費が比較的安く、環境負荷の小さい木造住宅の需要が高まっています。
しかし、木造住宅は設計や施工次第では低品質な住宅ができてしまう可能性があるということも覚えておかなければいけません。
工業化されたプレハブ住宅と違い、木造住宅は設計も施工も自由度が高いという特徴があります。そのため、活かすも殺すも人の手に掛かっているとも言えます。安心して木造住宅を建てるためには、いくつかの注意点をおさえておかなければいけません。
そこで今回は、建築家が木造住宅で家を建てることのメリットや注意点を解説します。安心して木造住宅を建てたい方に必見の内容です。
木造住宅のメリット
木造住宅には様々なメリットがあります。
- 軽量で耐震性が高い
- 断熱性が高い
- 個性的なデザインが可能
- 環境に優しい
- 健康的で快適な室内環境
以下にて順番に解説します。
軽量で耐震性が高い
木は軽量かつ、地震などの自然災害に強い建材です。
木造は弱いというイメージを持たれている方もたくさんいますが、それは古く、メンテナンスもされずに傷んでしまった木造住宅のイメージでしょう。
適切な構造で計画されて、メンテナンスが行き届いた木造住宅は強く、長持ちします。お寺などの歴史的建造物が何百年も残っていることがその証拠です。
木は、比較的軽量で、柔軟性があります。これにより、地震などの外力が加わると、一定の柔軟性によってその力を吸収し、建物の崩壊を防ぎます。
柔軟性だけでなく強度も高く、伸縮性もあります。地震などの外力が加わっても、一定の変形を許容しながら、崩壊を防ぐことができます。
また、専門的な用語で防振性能というものがあります。木造住宅では、耐震補強などの施工により、より高い防振性能を持つことができます。例えば、柱の間にクロスブレースを取り付けることで、建物全体の剛性を高め、地震時の震動を抑制することができます。
そして重要なのは建物の重量。建物自体の重量が大きい方が地震時に大きなエネルギーが発生するため、地震対策としては軽い材料で強度を確保することが理想的です。
以上のような理由から、木造住宅は耐震性に優れているといえます。地震が多い日本において木造住宅は最も適した構法の一つです。
断熱性が高い
木は断熱性能に優れているため、夏は暑くなり過ぎず、冬は冷たくなりにくいという特徴があります。
なぜ木は断熱性能が高いのか。それは木の細胞や繊維に秘密があります。
木は、細胞構造が空気層を多く含み、空気の含有率が高いため断熱性に優れています。また、木の細胞自体が多孔質であることも断熱性が高い理由の一つです。
また、木は繊維が縦方向に配列しており、縦に伝わる熱伝導が少ないため断熱性に優れています。このため、木材を使った壁や床などには、断熱材と同じような断熱性を持たせることができます。
加えて、多様な加工方法が可能で環境にやさしい木は、建材としての使い勝手に優れています。そのため建築物の至るところで使いやすく、家の断熱性能を保つことができます。
したがって、木造住宅は高い断熱性能を持っている木材と断熱材と組み合わせることで高い断熱性を実現することができます。
個性的なデザインが可能
木造住宅は個性的なデザインが可能です。
その理由は、木は設計・施工の自由度が高く、木目や色合いなどの質感が高いからです。
建築物は構造体の強度や安全性を確保するために、建築基準法に基づく構造計算が必要です。この構造計算は、建物の規模や構造などによって確認申請の区分が分かれており、ほとんどの木造住宅は4号と呼ばれる区分に該当します。
4号区分は規模が小さい建築物で、最も簡単な構造計算で申請することができます。つまり、他の構法と比較して構造上の制約が少なく設計の自由度が高いと言えます。
また、木は比較的軽量で扱いやすいため、施工の自由度が非常に高いのも特徴です。木材の柔軟性や強度を活かすことで、様々な形状やデザインの住宅を実現することができます。
また、木材は比較的加工しやすい素材であるため、細かな加工や部品の組み合わせによって、より複雑な構造やデザインを実現することができます。
結論、木造住宅は設計や施工の自由度、素材の柔軟性や色合いの多様性などの特性により、個性的なデザインが可能です。建築家やデザイナーとの十分な相談や協力が必要ですが、木造住宅ならではの美しさや個性を表現できます。
環境に優しい
木造住宅は、環境にやさしいとされています。
なぜなら木は再生可能な素材で、二酸化炭素の吸収量が大きいからです。
木は、再生可能な資源であり、自然に生育しているため、石油や金属といった非再生可能な資源と比較して、環境負荷が少ないとされています。また、木材は二酸化炭素を吸収することができるため、炭素循環に大きな役割を果たしています。加えて木材を使用することで、その吸収した二酸化炭素を蓄え、地球温暖化を防止することにつながります。
それだけはありません。木造住宅は、建材の廃棄物が少なく、リサイクルが容易です。新築時だけでなく、将来的な建て替えのことを考えても環境負荷を抑えることができます。また、前述の通り木材は断熱性に優れているため、木造住宅には高い省エネ効果をあります。
繰り返しになりますが、木は再生可能な素材であること、二酸化炭素の吸収量が大きいこと、建材の廃棄物が少ないこと、断熱性能に優れることなどの理由から、環境にやさしい素材とされています。木造住宅は、省エネルギーや環境保全に貢献することができ、持続可能な社会の実現につながると言えます。
健康的で快適な室内環境
木造住宅は、健康的で快適な室内環境を提供することができます。
その理由は、木には以下の4つの特性があるからです。
- 自然素材なので化学物質の発生が少ない
- 良好な調湿性能がある
- 快適な温度環境を保つ
- 自然の温もりが感じられる
- 自然素材なので化学物質の発生が少ない
木造住宅は、壁や天井、床などに自然素材を使用するため、VOC(揮発性有機化合物)や化学物質の発生が少ないです。そのため、室内に健康被害を及ぼす化学物質の発生が少なく、健康的な室内環境となります。
- 良好な調湿性能がある
木材は、その吸湿性・放湿性に優れています。また、木造住宅には、自然換気や断熱材などを活用した通気性を高める仕組みが多く採用されています。これにより、室内湿度を適切なレベルに保ち、カビやダニなどの発生を抑えることができます。
- 快適な温度環境を保つ
木造住宅は、断熱性能が高く、外気からの熱の侵入を防ぎます。また、木材自体が断熱性に優れているため、室内の温度変化が緩やかになります。そのため、室内の温度を一定に保ち、快適な温度環境を実現することができます。
- 自然の温もりが感じられる
木造住宅は、その素材感や質感、香りなどが自然の温もりを感じさせます。これにより、室内の居心地が良く、リラックスできる空間となります。
以上のような特性があるため、木造住宅は心身ともに健康を促進し、暮らしの質の向上につながります。
木造住宅の耐震性が低い?
木造住宅は耐震性が低いのでは……?と疑問を持たれている方もいるのではないかと思いますが、これは間違いです。
木造住宅は他の構法と同じように高い耐震性能を確保することができます。
その理由は、木には以下のような特性があるからです。
- 軽量で柔軟性がある
- 部材同士の接合が強固である
- 耐震補強が可能である
- 軽量で柔軟性がある
木材は軽量で柔軟性があり、地震時に地盤と建物の振動を同期させることができます。これにより、地震の影響を吸収しやすく、建物全体が揺れにくくなります。
- 部材同士の接合が強固である
木造住宅では、構造材同士を釘やボルト、金物で接合することで、強固な構造を作り上げます。また、近年では、接合に接着剤を使用することで、より強固な構造を実現することができます。
- 耐震補強が可能である
木造住宅は、必要に応じて耐震補強を行うことができます。例えば、柱や梁に補強材を追加することで、耐震性を向上させることができます。
加えて、木造は他の構造と比較してコストが安価です。同じ強度であれば建築費用が安い構法を選択したいという方は木造住宅をおすすめします。
結論として、木造住宅は高い耐震性能を実現することができます。
木造住宅を建てるなら建築家に相談すべき理由とは?
木造住宅を建てるなら、建築家に相談することをおすすめします。理由は以下の2点です。
- 設計の自由度を活かせる
- 設計段階でも施工段階でもこだわりを発揮できる
詳しく解説していきます。
設計の自由度を活かせる
木造住宅は、構造上の規制が少なく、設計の自由度が高いと言われています。その設計の自由度を最も活かすことができるのは建築家です。
なぜなら、建築家は社内規定や規格の設計にとらわれず、自由な発想や考えのもとに設計を行うことができるからです。
ハウスメーカーや工務店は、一定の標準化されたデザインや構造に基づいた住宅を提供することが多く、それに合わせた設計や施工が行われます。自由設計をうたっていたとしても、本当の意味で自由ではないことが多く、実際はできないことだらけなのが現実です。
一方建築家は、クライアントの希望や要望に合わせたカスタムデザインの住宅を設計することができます。デザインや構造、素材、照明などの要素を総合的に考慮して、住まい手が求めるイメージや機能性、快適性を実現するための設計を行います。
品質優先で、規定を守る建築会社ももちろん素晴らしいと思います。しかし、品質や法律は守りつつ、デザインや独創性やオリジナリティを追求することができるのが建築家です。
設計段階でも現場段階でもこだわりを発揮できる
建築家は設計段階でも現場段階でもこだわりを発揮できます。
その理由は、設計と現場監理を同時にできるからです。
ほとんどの建築会社は設計者と監理者に分かれています。餅は餅屋ということで作業を分担しており、これは当たり前といえば当たり前と言えます。しかし、こだわった木造住宅を作る場合、設計者と監理者は同一人物であることが理想的です。
なぜなら木造住宅は、他の工法と比べて現場監理が非常に重要だからです。木造住宅は現場での作業が多く、施工過程も多く、工期も長いです。設計者の意図を現場監督や施工者が理解することがとても重要で、精度の高い図面や丁寧な引き継ぎ作業を行ったとしても、必ずと言っていいほど現場次第で良し悪しが変わる状況があります。
そのときに、建築家のように設計と監理を両方行っていると適切な判断が可能です。他の人なら気づかなかったことに気づくこともでき、より良い施工ができる可能性が高くなります。
木造住宅は現場がとても重要です。設計も現場監理を行う建築家は木造住宅をつくるパートナーに最適と言えるでしょう。
木造住宅を建てる際の注意点
木造住宅を建てる際には、いくつかの注意点があります。高品質な家を建てて、快適に長く住むために以下のようなことを念頭においておきましょう。
- 建材の選定に注意
- 施工の品質管理が重要
- 防腐処理や防蟻処理の実施
- 維持管理の必要性
- 建材の選定に注意
木造住宅では、建材の選定が非常に重要です。柱や梁などの主要な構造材には、高品質な木材を選ぶ必要があります。木材の場合は、JISによって材質や寸法、強度などが定められています。JISに適合する製品を使用することで、建物の耐久性や安全性を確保することができます。
- 施工の品質管理が重要
前述の通り、木造住宅では、現場での加工が多いため、施工精度管理が非常に重要です。加工の精度や品質に問題があると、建物の構造やデザインに大きな影響を与えることになります。施工の品質管理には、高い技術力と経験が必要です。
- 防腐処理や防蟻処理の実施
木造住宅では、防腐処理や防蟻処理などが必要です。特に、地盤の湿度が高い場所や、風雨や紫外線などによって劣化が進む場所には、十分な処理が必要です。メンテナンスのコストや周期を確認しておきましょう。
- 維持管理の必要性
木造住宅は、定期的な維持管理が必要です。定期的な塗装や防腐処理、検査などを行うことで、建物の寿命を延ばすことができます。
適切な性能が確保されているかを確認する指標として最も簡単なのは性能表示制度の利用です。性能表示制度は国が指定する第三者機関が設計や施工をチェックするシステムで、性能が可視化されています。わかりやすく、かつ手っ取り早く住宅の性能を確認したい方にはおすすめです。
まとめ
建築家が解説する木造住宅のメリットや注意点を解説しました。
木造住宅にはたくさんのメリットがあります。コストパフォーマンス、省エネ、設計や施工の自由度、環境負荷。どれも家づくりには欠かせない重大な要素です。
建築家と建てる木造住宅なら、不安や悩みを解決しながら理想に近い木造住宅を計画できると思います。木造住宅を検討されている方はぜひお問い合わせをしてみて下さい。