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建築コラム

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間取り

2023.01.23

建築家が教える良い間取りのつくり方とは?住みやすい家の共通点

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家づくりをしている方の中には間取りで悩んでいる方も多いのではないでしょうか。


この記事では良い間取りのつくり方について建築家が解説します。これから家づくりをはじめる方、今まさに間取りを検討している方の参考になります。


良い間取りの条件はたくさんありますが、特に重要な項目は以下の通りです。


  • 日当たりが良い
  • 風通しが良い
  • 壁が少ない
  • 廊下が少ない
  • 無駄な窓がない
  • 断熱性能が高い

詳しく解説していきます。


日当たりが良い


住宅において日当たりはとても大切です。


日差しが差し込むと冬でも室内が温かくなるからです。また、日が差し込むことで室内が明るくなり、精神的にも明るい気持ちになります。


照明をつける時間が減り、洗濯物も乾きやすくなり、良いことばかりです。

日差しは誰でも利用できる無料の資源。利用しないともったいないですよね。


日当たりを確保するためには土地の分析が重要です。方角、隣家の位置や高さ、建物配置などから、日当たりを確保するためにどのような設計が必要なのかを調べます。


そのうえで、建物の形、窓の位置、窓の大きさなどの計画をたて、理想的な日当たりを確保していきます。具体的には以下のようなことに注意しましょう。


南側に大きな窓を設ける


基本的なことですが、日当たりをしっかり確保したいときは南側に大きな窓を設けます。


太陽の高度の関係から、南側の窓は冬は日差しが入り、夏は日差しが入り辛いので四季を通じて理想的な日照条件を確保することができます。


たとえば賃貸住宅の家賃は南向きの物件が最も高くなります。同じような間取りでも、南側に向いている間取りは日当たりが良くて快適だからです。


日当たりが良い快適な間取りにするためには、とにかく南側に大きな窓を設けることが重要です。


土地に合わせた間取り


間取りは土地に合わせてつくる必要があります。


なぜなら土地によって最適な建物の形が異なるからです。


特に日当たりにおいては、南側の隣家からどれだけ距離を確保できるかが重要です。また、隣家の形によっては日が当たる場所も異なります。


最適な日当たりを確保するための間取りは、土地次第で異なります。土地の分析、土地に合わせた設計が重要です。


庇や植栽でさらに効果的な日照を


窓の上には庇があるとより効果的です。庇は夏の暑い日差しは遮り、地面からの照り返しもある程度防止してくれます。


庇は100センチくらいの長さが理想的です。100センチくらいであれば冬場の日当たりにもほとんど影響がなく、夏の日差しだけをカットしてくれます。


また、南側の窓の外側に落葉樹を植えるとより効果的な日当たりを確保できます。夏は枝に茂った葉が暑い日差しを遮り、冬は葉が落ちて光を取り込んでくれるからです。また、落葉樹は季節感があるため、外から見ても室内から見ても風情があります。


風通しが良い


風通しが良いことは良い間取りの条件です。


なぜなら風通しが良いと以下のメリットがあるからです。

  • 自然の風は気持ちいい
  • 冷房に頼らない生活ができる
  • 湿気がたまりづらくなる

窓から入ってくる自然の風はとても気持ちよく、温熱環境を最適にしながら空気を新鮮にしてくれます。


また、風通しがよければなるべく冷房に頼らずに暑い夏を過ごすことができるので経済的かつ健康的です。


家の中に湿気がたまりにくくなるのも大きなメリット。湿気は結露やカビの原因になるため、室内の空気環境を汚染します。また、壁の中で結露が発生すると躯体傷む原因にもなります。


風通しを確保することで様々なメリットがあり、様々なリスクを回避することができます。


風通しが良い間取りをつくるためには


では、風通しが良い間取りをつくるにはどのようなことに注意すれば良いのでしょうか?


重要なのは以下の3点です。

  • 風の方向を確認する
  • 建具は引き戸にする
  • 2方向の窓を設ける

風の方向を確認する


その土地にどの方向から風が吹くのか確認しましょう。


地域や周辺の状況によって風の流れは大きく変わるからです。やみくもに窓を設けても、風の流れとは無関係の位置であれば風通しは期待できません。


日本は、全国的に南北方向へ風が抜けやすい特徴があります。風の方向には気圧が大きく関係しており、夏場に太平洋高気圧が南からやってくることがその要因です。

つまり、一般的には南側と北側に窓を設けると風通しが良い家になると言えます。


しかし、繰り返しになりますが風の向きは敷地条件によります。


たとえば近くに海があれば海からの風が強く吹きます。東側に海があれば東側からの風を取り込むような設計が有効です。


また、山の中腹なら山頂から強い風が吹きおろしてくることが予想されます。その風が心地よい風なら取り込むように設計すべきですし、防ぎたい強風なら防風の目的で植栽を植えたりする必要があります。


風を取り込むにせよ、防ぐにせよ、いずれの場合でもその土地の特性を正しく理解して設計する必要があります。

建具は引き戸にする


風通しを考えるなら建具は引き戸で設計しましょう。


引き戸は開き戸と比べて開け放しやすいからです。


開き戸を開けている状態で風が吹きこむと、バタンッとしまってしまうことがあります。ストッパーで動かないようにすることもできるかもしれませんが、いちいちストッパーを操作するのも面倒です。


風通しのために建具を開け放すことを考えると、やはり引き戸が優れています。


引き戸にするときは上吊りタイプにしましょう。下に敷居の溝やレールがあるとホコリがたまりやすく、掃除が面倒です。上吊りの方が建て入れ調整がしやすいというメリットもあります。


建具は開け放しやすい引き戸にして、風通しが良い間取りにしましょう。


2方向の窓を設ける


2方向の窓を設けることで室内の風通しは良くなります。


風通しを良くするためには風が入ってくる窓だけでなく、風が出ていく窓も設計することが重要だからです。1方向の窓だけでは、圧力の関係で風は通り辛くなります。


窓は南側と北側に設けることができればベストですが、やむを得ず東側や西側に設けるときはなるべく小さい窓にして熱取得を抑えましょう。特に西側の窓が大きすぎると夏の冷房効率を著しく下げてしまうので注意しましょう。


風通しのために設ける窓は小さくても問題ありません。


間取りを考えるときは、風の通り道を考えながら窓を設計することが大切です。

壁が少ない


壁が少ない間取りは良い設計です。


壁が少ければ少ないほど建築費用を抑えることができるからです。壁が多いと、その分の柱や壁下地などの材料費や大工手間がかかる他、壁仕上げ面積が増えるため内装工事もかかります。


少ない壁で間取りをつくるためには、柱の配置や耐力壁の配置をよく考える必要があります。壁が少ないということは、家を支える柱や耐力壁が配置できる場所が少ないとも言えるからです。


少ない壁で間取りを成立させるためのコツもご紹介します。


間取りは構造から考える


壁の少ない家を作るコツは、間取りを構造から考えることです。


家の形がある程度わかれば必要な柱や壁の位置は決まってきます。それならば、まず必要な壁の位置を構造の効率から考えて決め、それに合わせて必要な間取りの要素をいれていく、という形がおすすめです。


間取りを考えるのはそれだけ難しく、知識や技術を必要とする作業です。ある程度の希望を伝えたら、基本計画は建築家に任せた方が良いでしょう。


構造も考慮すると、無駄なコストをかけない間取りをつくることができます。


壁が多いと部屋が狭くなる


壁が多いと部屋が狭くなるというデメリットもあります。


壁は空間を分断するからです。同じ家の面積の中で壁が多ければ多いほど空間は分断されてどんどん部屋が小さくなっていきます。


家の使い方を考えれば考えるほど壁は増えがちですが、壁を増やしすぎて部屋を狭くしてしまわないように気をつけましょう。

廊下が少ない


廊下が少ない間取りは良い間取りです。


なぜなら、廊下が多ければ多いほど部屋の広さや収納に当てられる面積が減るからです。


たとえば一階の部屋の面積が20坪だとします。このうち廊下の面積が1坪だとすると、残りの19坪を部屋や収納にあてることができます。

対して、廊下が3坪ある間取りならどうでしょうか。残りの面積が17坪であれば、19坪のときよりも居室の広さや収納量が充実しないのは明らかです。


マンションのチラシの間取りを思い出してみましょう。マンションの間取りは廊下が最小限に抑えられ、限られた面積を部屋の面積にあてています。

マンションは収益化が命なので、限られた面積をなるべく部屋の広さや収納にあてるために徹底的に無駄が排除された間取りが考えられています。


快適な間取りやデザインの高い間取りをつくることは大事ですが、それらと同じくらい重要なのは廊下が少ない無駄のない間取りをつくることです。


無駄なコストを省く


廊下を減らせば無駄なコストを省くことができます。


廊下をなくすことで床面積を減らすことができるからです。リビングを小さくするのはかなりの割り切った考えが必要ですが、廊下を減らすことは間取りの工夫次第です。


また、廊下が多いということは壁が多いということです。同じ床面積でも壁が多い方が当然建築費用は高くなるため、無駄なコストだと言えます。


コストを抑えたいなら廊下を少なくすることはとても重要です。


トイレは廊下が必要


トイレの前は廊下があった方が良いでしょう。


廊下があるとプライバシーを保ちやすいからです。廊下を設けるとトイレをリビングや玄関から離して視線や音に配慮することができます。


重要なのはトイレのためだけの廊下にしないことです。玄関ホールや階段の前など、そのほかに必要な廊下と兼ねることができれば無駄な廊下が増えません。


リビングや玄関から丸見えにならないために、トイレの前には廊下が必要です。


無駄な窓がない


良い間取りには無駄な窓がありません。


必要のない無駄な窓は建築コストを増やし、熱を逃がし、防犯性を下げてしまうからです。目的のない窓は極力なくすべきです。


窓には以下のような目的があります。

  • 光を取り入れる
  • 日差しを取り入れる
  • 風通しを確保する
  • 景色を見る

このどれにも該当しない窓は無駄な窓と言えます。


なんとなく計画した窓は無駄な窓になりがちです。計画しようとしている窓が本当に必要かどうかは考えた方が良いかもしれません。

熱が逃げる


窓からは室内の熱が逃げます。


断熱材が入っている壁に比べると窓は断熱性能が劣るからです。どれだけ高断熱の窓だったとしても、熱はやはり窓から逃げます。


材質の断熱性能を表す指標で「熱貫流率」というものがあります。これは「熱の伝えやすさ」を表す単位で、外壁、屋根、床、窓などの建築物の外皮で計算されます。


使用する建材によって数値が変化しますが、窓の熱貫流率は壁の熱貫流率のおよそ4倍。業界トップクラスの高断熱サッシだったとしても3倍ほどです。


このことからも、壁よりも窓の方が何倍も熱を通しやすいということがいえます。


コストが上がる


窓が増えると建築コストが増えます。


窓が増えると壁の面積が減りますが、それ以上に窓の材料費用、施工費用が高いからです。

また、場合によってはカーテンの費用もプラスで必要。


余計な窓を減らすことはコストダウンに有効であると言えるでしょう。


掃除が大変


窓は掃除が大変です。


ガラスに雨垂れがつき、網戸は汚れ、桟は黒ずんでいきます。窓台のホコリ掃除もなかなか面倒です。


日差しや風を取り込む大活躍している窓の掃除ならまだしも、大して役に立っていない窓の掃除は精神的にも参ってしまいます。


窓を減らせば掃除も楽になります。家事を楽にするためにも無駄な窓は減らした方が良いです。

断熱性能が高い


良い家の条件に断熱性能は欠かせません。


断熱性能が高い家は、

  • 冬でも温かいので快適
  • 冷暖房の使用頻度が減るので経済的
  • 冷暖房に頼らないので健康的
  • 室内で温度差が少ないので健康的

というメリットがあるからです。


昨今は環境問題も叫ばれており、省エネ住宅を推奨する様々な施策もあります。条件が合えば補助金がもらえることもあるのでメリットは高いです。


燃料費の高騰を考えても、省エネ住宅の需要は伸びることは間違いありません。これから建てる家は高断熱であることが絶対条件でしょう。


現代の省エネ基準


現代の省エネ基準を知っておきましょう。


日本政府はCO2実質ゼロの脱炭素社会を目指しています。日本が排出しているCO2のうち、3分の1は建築が原因。建築業界むけに脱炭素の取り組みが定められています。


その中で住宅に課せられているのが省エネ基準です。


2050年の脱炭素社会実現に向けて、2025年度からは全ての新築住宅に省エネ基準の適合が義務付けられる予定です。


この省エネ基準が制定されたのは2016年。当時は高性能とされていた断熱基準を義務化し、省エネ住宅を増やしていく取り組みです。

まとめ


建築家が教える良い間取りの条件をご紹介しました。


家づくりには他にもたくさんの検討が必要です。価値観は人それぞれですし、土地やご家族の状況により最適な計画は変わるからです。


でも、以下は家づくりをする方全員に必要なことです。

  • 自然を活かす
  • 無駄をなくす
  • コストを抑える

今回の記事はこれらを実現するための内容です。

家づくりを楽しみながら良い間取りをつくり、住んだあとも明るく快適に暮らしましょう。

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