「新築住宅は高いから、中古住宅を買おう」
と考える人は少なくありません。
資材高騰、賃金が上がらない、円安などの社会的背景も影響しています。家を建てるコストが高くなっているのなら、すでにある住宅を活かすことを考えるのは自然なことです。
しかし、中古住宅は不安もつきものです。
- 構造は大丈夫?
- リフォーム費用がかかりすぎるのでは?
- 住んでから気づくデメリットが多いのでは?
- 中古住宅で理想の住まいになるか心配……
などといった悩みを抱えて中古住宅の購入に踏み切れない方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事ではこれらの悩みを建築家が解説して、具体的な解決策までご紹介します。
中古住宅の実態を知りたい方、中古住宅の購入を考えている方はぜひ読み進めてください。
中古住宅の構造をチェックする方法
中古住宅でまず心配なのが構造です。
家は安全が第一。構造に心配がある家では安心して住むことができません。構造は住宅に求める最も重要な要素といっても良いでしょう。
しかし、中古住宅は構造材が劣化や湿気で傷んでいる可能性があります。また、そもそも最初から適切な構造計画がなされていないという心配もあります。
見えない構造部分はどうすればよいか。大切なチェック項目は3つあります。
中古住宅は築年数をチェック
まず築年数をチェックしましょう。
なぜなら築年数を知ることで、建築時の段階で適切な構造計画がなされていたかどうかがわかるからです。
建築基準法の耐震基準は1981年に大幅に改正されました。1981年5月31日までに建築確認を受けた物件は「旧耐震基準」、1981年6月1日以降に建築確認を受けた物件は「新耐震基準」と呼ばれます。
数ある建築基準法の改正の中で、1981年の改正はとても大きな改正でした。旧耐震基準では、
「震度5程度の中規模の地震で大きな損傷を受けないこと」
となっていた基準が、新耐震基準では
「中地震では軽微なひび割れ程度の損傷にとどめ、震度6程度の大規模な地震で建物の倒壊や損傷を受けないこと」
と変わっています。倒壊さえしなければよかった基準が軽微な損傷にとどめないといけなくなったため、このときを境に建築物の強度は大きく変わったと言えます。
一般社団法人日本耐震診断協会によると、阪神淡路大震災では6,434人もの人が亡くなられたそうです。そのうち、死因の9割は住宅倒壊、倒壊した住宅のうち98%は旧耐震基準だったそうです。
参考:https://www.taishin-jsda.jp/column30.html
もちろん新耐震基準なら絶対に安心というわけではありませんが、最低限の基準をクリアしているという安心感はあります。
中古住宅は築年数をチェックして新耐震基準であることを確認しましょう。
シロアリの被害をチェック
シロアリの被害をチェックしましょう。
なぜなら、シロアリの被害が進んでいたら致命的な構造の欠陥になるからです。どれだけしっかりした構造で建てられていても、構造の核である柱や土台の中身がシロアリに喰いつくされている可能性があります。
でも、どうやってシロアリの被害をチェックするかわかりませんよね。
答えは簡単。「シロアリ業者に見てもらう」です。
シロアリ業者はシロアリ工事の要否を判断するために床下調査をします。販売中の中古住宅で調査が可能かどうかは売主や仲介業者に確認が必要ですが、シロアリ調査もさせてくれない物件は恐いのでやめた方が良いかもしれません。
事前に構造材の傷み具合やメンテナンスコストをチェックするのは当たり前。後々かかる費用もわからないまま家を買うのは危険です。
雨漏りの状態をチェック
雨漏りの状態をチェックしましょう。
もし雨漏りをしていたら構造材が重大なダメージを受けている可能性が高いからです。木なら腐っているかもしれませんし、鉄なら錆びているかもしれません。
雨漏りの有無については仲介業者に直接聞いてみましょう。家の雨漏りは「物理的瑕疵」に該当し、売却するときには過去の雨漏り実績や雨漏りがあった可能性について買主に説明する義務があります。
また、最上階の天井を見ることで雨漏りの有無がわかります。過去に雨漏りがあった家は天井に大きなシミができているからです。
雨漏りがあると躯体が傷むだけでなく、小屋裏や壁内にカビが生える可能性も高まるため必ずチェックしましょう。
中古住宅でも理想の住まいはできる
ちょっとした工夫で、中古住宅でも理想の住まいを実現できます。
既存の空間をリフォームすることで、自分好みの空間をつくったり、使い勝手良く改修したりすることができるからです。
とくにインテリアはどうにでもなります。壁を塗ったり、新しい家具を置いたり、外装ほどお金をかけずに自分らしさを取り入れて楽しめます。インテリア雑貨や観葉植物にこだわるだけでも空間のイメージは大きく変わります。
中古住宅でしか出せないテイストもあります。カフェや雑貨屋でよくみかけますが、木材が少し傷んだヴィンテージ感、使い古した味を活かすようなインテリアは中古住宅ならではです。
むしろ中古住宅の方が建築費用を抑えることができる分、インテリアにお金をかけることができるというメリットも。理想の住まいへのこだわりが強い方にも中古住宅+リフォームはおすすめです。
中古住宅で直面しがちなデメリット
中古住宅で直面しがちなデメリットはたくさんあります。
その中でも特に多いのがコストです。
「思った以上に費用がかかる」という声がとても多いです。
中古住宅を購入するなら、
- リフォーム費用
- メンテナンス費用
- 解体費用
について考える必要があります。
リフォーム費用がかかる
中古住宅を購入するならリフォーム費用を考える必要があります。
中古住宅で快適に暮らすためには、何かしらの工事をしないといけないことがしばしばあるからです。
たとえば、キッチンやユニットバスなどの設備は、新しく替えると見栄えが良いだけでなく、断熱性や収納量なども優れています。
窓ガラスは断熱性に雲泥の差があります。新しいサッシに改修すると温かくて快適なだけではなく、光熱費をおさえ、身体にやさしい健康的な生活を送ることができます。
床・壁・天井を替えると室内はほぼ新築同様になります。内装を好みのデザインにすることで普段の気持ちも明るくなります。
リフォームをどこまでやるかによって初期費用が大きく異なります。
特に注意が必要な窓ガラス改修
特に窓ガラス改修は重要です。
単板ガラスを複層ガラスに替えるだけで驚くほどの効果があります。結露が少なく、外の冷気が室内に伝わりにくくなるため、快適で健康的で経済的です。
デメリットはリフォーム費用が高額になることです。窓の改修は枠を残してガラス部分をアタッチメント付き複層ガラスに替える計画が多いですが、窓が多ければ多いほどその費用は高くなります。一般的には窓一か所あたり10~15万円の費用がかかるため、窓の改修だけで100万円を超えることも珍しくありません。
リフォームを検討するときは窓ガラスの改修をするかどうか、コストと効果を考えて必ず検討しましょう。
メンテナンス費用がかかる
中古住宅はメンテナンス費用がかかります。
中古住宅を購入する際の初期費用は、新築よりも低く抑えることができますが、
住みやすい状態を維持するためには必要な工事が必ずあるからです。状態によって外装、内装、設備の改修工事を検討する必要があり、場合によってはこれらすべて費用がかかる可能性もあります。
特に外装には注意が必要です。屋根や外壁などの外装工事は高額になりやすいだけでなく、メンテナンスを怠ったときに躯体に与える影響も大きくなります。外装は紫外線や雨風から建物を守ってくれているからです。
外装メンテナンスは10〜15年おきに必要です。特にコーキング部分は劣化が激しい場合が多いので、雨漏りの原因にならないよう、工務店や建築会社へ依頼して定期的に点検をしてもらいましょう。
中古住宅を適切に維持するためにはお金がかかります。
解体費用がかかる
中古住宅はいつか解体して建て替えや土地の有効活用を考える人も多いと思いますが、予想以上に解体費用がかかることがあります。
その原因となるのは以下の3つです。
- 分別とリサイクル
- 有害物質を含む資材の解体
- 車両の搬入
解体費用がどれくらいかかるかも事前に確認をしておいた方がよいでしょう。
分別とリサイクル
建物を解体するときは分別とリサイクルをしなければいけません。これは環境負荷を軽減するために義務付けられています。廃棄物を最小限に抑えて材料を適切にリサイクルすることで、新しい材料の生産量を減らし、エネルギーの節約と排出量の削減につながります。
分別とリサイクルがあることで、昔と比べて解体工事の期間は2〜3倍の工期がかかり、廃棄物改修のトラックの台数は2〜3倍になりました。当然解体工事費用も2〜3倍になっています。
有害物質を含む資材の解体
有害物質を含む資材の解体にはかなりの費用がかかります。代表的な有害物質はアスベストです。
石綿とも呼ばれるアスベストは発がん性物質として知られており、がんや中皮腫、その他の深刻な病気と関連があるとされています。アスベストの繊維を吸引または摂取すると、生涯続く健康障害を引き起こす可能性があるのです。
解体工事の際には飛散に注意して慎重に行わなければいけません。これには特殊な足場、仮囲い、防護服が必要になるため、アスベスト含有がない(規定値以下)の場合と比較して、解体費用は2.5〜3倍になります。
車両の搬入
解体現場に大きな工事車両を搬入することができるかどうかで解体費用は大幅に変わります。
大きな工事用車両が搬入できない場合は、小型車になるため往復回数が増えたり、手作業が増えて追加の労働力を雇う必要があるためです。また、工事車両の搬入がしづらい土地は作業に時間がかかるためコストが高くなります。
中古住宅のコストについて
中古住宅のコストを把握しておきましょう。
具体的には以下3つのコストについて解説します。
- 中古住宅のイニシャルコスト
- 中古住宅のランニングコスト
- 中古住宅のメンテナンスコスト
中古住宅のイニシャルコスト
中古住宅のイニシャルコストは、中古住宅の購入費用+リフォーム費用です。
中古住宅のリフォームは投資でもあります。見た目を新しくするだけでなく、使い勝手や快適性にこだわり、家の価値を上げることを目的としているからです。
新築と比較してほとんどの既存の材料を再利用するため、節約できたお金をリフォーム代にまわして自分なりの工夫を凝らすことができます。よほどのリフォームでなければ、中古住宅の方が新築と比較して圧倒的にイニシャルコストは安くなります。
イニシャルコストを抑えることができる、またそのお金で、リフォームや家具にこだわることができるのが大きなメリットです。
中古住宅のランニングコスト
中古住宅のランニングコストもしっかり考える必要があります。
ランニングコストは住んだあとにわかるものが多いため、見落としがちだからです。
まず考慮すべきランニングコストは光熱費です。電気代とガス代。断熱性能が劣ることが多い中古住宅は暖房費があっという間にかさみます。
また、水道代、固定資産税、火災保険料なども重要です。これらはすべてすぐに積み重なり、管理が難しくなる可能性もあるためあらかじめ工務店や建築会社に相談してかかる費用を想定しておきましょう。
中古住宅のメンテナンスコスト
メンテナンス費用も考えておきましょう。当然、大きな費用が割と早い段階でかかります。
中古住宅のほうが新築よりも傷みが激しいためです。住宅購入時に見落とされがちな費用なので注意しましょう。
具体的なメンテナンスは以下の通りです。
- 屋根の葺き替え、外壁の塗装、窓の交換、基礎の補修などの外装メンテナンス
- 床のワックスがけや張り替え、壁紙の張り替えなどの内装のメンテナンス
- 配管の交換、設備機器の改修、電気設備の修理などの設備のメンテナンス
これらの費用は高額になるだけでなく、時間がかかるため、家の所有者は家のメンテナンスを維持するためにかなりの努力とエネルギーを投資する必要があります。
また、メンテナンス費用は、住宅の大きさ、築年数、立地する地域によって大きく異なる場合があるので、事前にどれくらいの費用が何年後に必要か確認しておきましょう。
家にかかる定期的なメンテナンス費用は、かなりの額に上る可能性があります。新しい家を購入する際には、これらの費用を考慮することが重要です。
まとめ
中古住宅を購入するときの注意点についてお話ししました。
中古住宅の購入は複雑で難しい面もありますが、必要な調査や手順をわかっていれば低コストで良い家に住むことができます。
立地条件、家の状態、購入費用、権利関係、間取りなどに注目が行きがちですが、この記事でご紹介したそれ以外の項目にも目を向けて見ましょう。
- 築年数と耐震基準
- シロアリの被害
- リフォーム費用
- インテリアのイメージ
- メンテナンス費用
- ランニングコスト
- 解体費用
これらをチェックすることで後悔のない家づくりができます。
家づくりを検討するときは中古住宅も検討してみましょう。中古住宅で理想の家になるかどうか不安な方は、ぜひ建築家に相談してみて下さい。